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  第二章 詞藻論

第十節 表出法

第六項 曲言法、詳略法

 曲言法とは語勢を緩和せんため、または語勢を強くせんため、斷言すべき所を斷言せす、直言すべき所を直言せざるの法なり。「從ふべし」といふべきを「違背せざるべし」といひ「彼れ勇なり」といふべきを「彼れ怯ならす」といふが如く直接に道破するを已めてわざと言を迂曲せしめ語勢の張れるを歛むるもの、又は「行くべし」といふべきを「行かざるべからず」といひ「言ふ」とあるべきを「言ふの外なし」「言はざるを得ず」として、語勢和かきを堅實にするもの等あり。
(參照) 彼の土の修辭家がライトーチーズ(Litotes)と呼ぶもの、曲言法の一部に相當すべし。
詳略法とは、一想念を表出する狀態のことさらに詳密なる描寫によるものとことさらに疎略なる描寫によるものとの別なり。またこゝに詳密といふ中には主として『讀書作文譜』に「文章最忌(ママ)衍。而文章佳處、又有在虛衍者。其理何居、曰應實發處、不能實發、謂之敷衍。地位不可實發處、虛々布置、謂之虛衍」といへるたぐひを含む。賦陳の法これなり。略言法と見るべきものには、「このあたり目に見ゆるもの皆凉し」といひて、其の景を細叙するに代ふるが如き、若しくは「喜左衛門」といふ名を「喜左」といひ「橫濱」といふ名を「濱」といふが如きあり。いづれも省筆の法なり。『讀書作文譜』に「有省文省句之不同。如其他彷此、餘可類推之類、乃省文法也。舜亦以命禹、河東凶亦然之類、省句法也」といへる、亦た省筆法の例に資にすべし。
(參照) 以上の外支那の修辭論者がしば〳〵數ふる修辭法の重なるは、賓主、虛實、襯貼等なり。『讀書作文譜』によるに虛實とは「文章非實不足以闡發義理。非虛不足以搖曳神情」といふにあり。襯貼とは「凡文之有襯如金玉之用雕鏤、綾綺之裝花錦」といひ「襯之理不一、或以目之所見襯,或以耳之所聞襯、或以經史襯、或以古人往事襯、或以對面襯、或以旁觀襯、或牽引上文襯或通取下意襯、皆襯貼也」といふにあり。賓主とは「凡借一理一事一説形出本題正意者無非賓主也」といふにあり。雌等は、要するに各別なる修辭法といふよりも、むしろ詞藻の總名、若しくは譬喩法、喩義と本義との別等に近きものなり。
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