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  第二章 詞藻論

第九節 布置法

第五項 照應法、轉折法、抑揚法

  照應法とは、一段の文中間斷を隔てゝ意義の直接なる脈絡を點示する法なり、例へば韓退之が「伯夷頌」に於いて、始めて士の特立獨行といふことを論じ、中間他事に筆を轉じて而して後更に「予故日若伯夷者特立猶獨行窮天地亘萬世而不顧者也」といひ、遙に冒頭と相照應するが如きこれなり。支那の修辭論者が重きを置ける辭法の一はこれにして、其の他草蛇灰線といひ、伏線の法といふが如きものも歸するところは照應法の原理にあり。而して照應法の基づくところは、思想が統同點を認めて滑かに暢達するにあれば、所詮形式美の理に合するものなるや論なし。
 轉折法とは、文中思想の脈路を一轉するの法なり。唐彪が『讀書作文譜』に「文章説到此理已盡、似難再説。拙筆到此技窮矣。巧人一轉灣、便反別是一番境界、可以生出許多議論、理境無窮。若欲更進未甞不可再轉也」といひ「折則有廻環反復之致焉。從東而折西或又從西折束也」といへるもの、要するに言路を他に求めて、別の方面より論を伸べんとするに外ならず。「夫れ」「そも〳〵」「遮莫」等の語を用ひて轉折法を助くるは普通の例なり。また夫の頓挫法といふが如きものも「用一二語頓之以作起勢、或用一二語挫之以作止勢、而後可施開拓轉折之意」といふの意に於いては、轉折法に合するを得べし。
 抑揚法とは同一事物に封し、相反せる兩様の情を刺戟して、其の一より他に移る所に趣を生ずるなり。其の情の推移する狀態によりて或は抑揚平均せりとの快感を伴ひ、或は抑へられしがために揚げらるゝの情一層強き對照の結果を伴ふ。『讀書作文譜』に「凡文欲發揚先以數語束抑、令其氣収歛、筆情屈曲、故謂之抑、抑後隨以數語振發、乃謂之揚、使文章有氣有勢、皆焰迫人」といへるもの歸するところは此にあり。外に開閤法といふものあり。「開閤者乃於對待諸法中而兼抑揚之致、或兼反正之致者是也。如賓主、檎縦、虛實、淺深諸法、皆對待者也、」といひて、結局賓主、虛實等に抑揚法などの加はれるものといふに歸す。されど其の賓主といひ虛實といふものゝ性質さだかならざるは後に言ふところの如し。隨つて開閤といふが如きも抑揚法の四部と見て不可なし。