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  第二章 詞藻論

第八節 化成法

第五項 情化法

 情化法とは一語句の意義を其のまゝ或る種の添詞によりて情のまゝに變ずるの法なり。西洋にてディミニューチーヴ(Diminutive)といへるは其の一種にて、我が文學中「さ」の字「を」の字等を加へて事物をを小化し可憐化し純粹化するたぐひは是れに相當す。「さを鹿」「をゆるぎ」などの如し。また反對に之れを大化し野化するものあり。俚話にて「ぶつたゝく」の「ぶつ」、「どしやうぼね」「ど蓄生」の「ど」「おつころぶ」「おんまける」の「お」等の如きこれなり。是等は其の初め多く固有の意義なる語なりしならんも、後にはたゞ一種の添詞として用ひらるゝに至れるなり。隨つて夫の語勢的音調と相似せり。
さよなかと夜はふけぬらしかりかねの聞こゆる室に月わたる見ゆ(『萬葉』)
仲國寮の御馬たまはりて明月に鞭を上げ西をさしてぞ歩ませける。を鹿鳴く此の山里と詠じけん嵯峨のあたりの秋の頃さこそあはれにも覺えけれめ。片折戸したる家を見つけては此の内にもやおはすらんと控ヘ〳〵聞きけれども琴彈くところはなかりけり。(『平家物語』)
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