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序言の一

 本書はさきに公にした『文章講話』を原材として新に稿を起こしたものである。全く新なる部分は「緖論、其の一」の、自然主義一流の新式文章の論二十頁を初めとして、東西の文章思想史五十餘頁〔其の中に西洋の文章論の祖たるアリストートルの『修辭學』の梗槪が二十餘頁ある、これは英譯より摘要したので、日本では始めて出たものである〕、文種、文體論の四十餘頁、國文に於ける平安朝文章の價値論十餘頁等で、其の他新に加へた所を通算して、少なくとも全體の半ば以上はある。情として「增補」とはいひたくない。『新文章講話』といふ新しい名稱を與へた所以である。
 本書の材料は全く新に蒐集したもの、說明、組織の方法もまた槪ね著者獨自の考案に成つたものである。全體の旨意は大略前著『文章講話』のに異ならぬ。左に前著の序文の一節を引いて昔を偲ぶ料とする。

一、文章上の諸現象を心理的に說明し、統一する事、日本文の特色を硏究する事、著者の微力を効したるは、主として此の二點に在り。本書若し幸にして從來の文章論に加ふる所あるを得ば、或は此の點にあらむか。
一、本書全體の組織は著者の考案に成れり。殊に八種の詞姿原理の說は、文章の修飾を心理的に說明せむと試みたるものにて著者の創案にかゝる。又書中往々著者の始めて說ける、或は新に命名せるものあり。結晶法、換置法、括進法、列叙法、稀薄法、緣裝法、舉隅法、側寫法、斷叙法、飛移法、避板法、方便法、遮斷法、變態法、超格法、追步式、散列式、頭括式、後括式、雙括式、等は、皆著者の始めて說ける、若しくは新に命名せるものなり。著者は是等の點に關して特に大方の敎を仰ぐ。

 拙い著述ではあるが、兎に角眞面目な研究の結果である。切に大方の是正を乞ふ。

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