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第七 主として順感の原理に基ける詞姿

 第四十六章 情化法

一〇六 一種の情を表はす添詞を幹詞に加へて優し味、可笑し味、荒々し味等を表はさしめ、或はかやうな情味を表はす樣に幹詞を愛化し、屈折せしむる詞姿、之れを稱して情化法といふ。例へば、男鹿、夜中、靑なる、細い、かツ囓る、いけ存在いな、いけづう〳〵しい、くそ忌ま〳〵しい、ひツこなす、(誚)ひツ通る、ひツつまへる、さらへ落とす、か落とすさらへかまはぬ、づく橫柄、しうくどい、の如きは表情詞を添へたもの、べらんめい、おきアがれ、ぐつ〳〵するねえ、おまはん(御前さん)母樣鳥足カアチヤマトツトアンヨ穢いバゝツチ蟲々チイ〳〵 の如きは幹詞を變化屈折せしめたものである。幸、堂、心地、嗜みの「」「」、罷り立て、罷り歸れも、罷りの如きも一種の情化詞と見てよい。敬語、甘え語氣質かたぎ語、社會語など、多くは之れに属する。

伍子胥が呉王を諫言の古い格、ど古い〳〵罷り歸れと縋り付けば突き離し、ムヽ愚人の耳にも見事みんごと伍千子胥が諫言の事聞き覺えしな。(近松『善光寺御堂供養』)
男鹿の朝忙つ野の秋はぎに玉と見るまでおける白露。(大伴家持)
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