第三 主として增義の原理に基ける詞姿

 第二十四章 重義法

其の八 交叙法


 六一 交叙法は一事を寫すに、之れを他事の間に挾み、或は他事と綯ひ交ぜて寫す詞姿で、他聞を憚る事を餘所事に託して云ふ場合などに用ゐらるゝものである。此の法は雙叙法に似て居るが、雙叙法は一觀念に二事を託するもの、交叙法は二事相まじへて交寫すものなる點に於いて相違がある。例へば、 一錢二錢のはしたでは聞かされぬといふ事を國姓爺中の文句に撚りまぜたのである。 鎌田の妻が料理の献立にからんで父なる長田庄司が義朝主從を殺す企てをげたのである。 五句の頭にかきつばたの五文字を讀み交へたる點に於いて一種の交叙法である。折句をりく履冠くつかむりなどいふ歌道の曲物きよくものも、皆交叙法の一種と見られる。 俗歌を綯ひ合はせて興を添へたのである。