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第三 主として增義の原理に基ける詞姿

 第二十四章 重義法

其の六 類裝法

 五九 類裝法とは類似の事物を列擧して文を裝ふもの、詳しくいへば、本旨に加ふるに同類相連なる面白味を以てして文の意義趣味を豐富にする詞姿である。例へば「さと佐渡のと能登とさ土佐さぬ君の讚岐美濃かゝ加賀る世にあふ身近江はうき伯耆をき隱岐かで老ひせん肥前。」といへば、太平の世にあうた身の心配がないといふ本旨の外に十個の國名のよみ揃へられた特殊の味はひが添ひ、「こうし敲いてもうしといへばなせか曰はくがありさうだ。」といへば、格子たゝいて訪づるゝには謂はれがあるといふ本旨の外に孔子、孟子、曰はくといふ儒敎的類語の集められた點に於いて特殊の趣が加はつて來る類ひで、其の他草づくし、橋づくし、貝づくし、掛物揃ひ、武器揃ひなど、いづれも類裝法に屬するものである。

行久卿內侍達膽を消し、ヤア〳〵神主が振舞大內の作法になし、下郎共そこのけと立ちさわげども聞き入れず、大內はともかくも神の作法は此の通りと公家も內侍もいはせばこそ、突きのけ踏みのけ追ひちらし鳳輦ひツ立て出でむとす。萬九郎つツと出でながえの棒をしツかと取り、どツこい神の作法とは此の萬九にむかつて、せんさくは舌長たけ長おのらがみの紙にはちつと杉原であるまいか。漆こしのかみは見通し春彥の尊と一しめになつて、妹をばうて鳥の子とは名鹽らしいたくみぢやな。サア此の輿に腕をかけ一寸でもすねのべ紙と、腰にさいたる七九寸かたツぱしに半切紙、半死半生ぢよう六文今の相場で一分五りんのうき世の中、命一つは露ちり紙末代の手本紙、えい〳〵〳〵と輿も人も十間ばかりぞおしこんだる。(巢林子『持統天皇歌軍法』)
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