第一 主として結體の原理に基ける詞姿

 第十六章 列叙法


 三九 列叙法とは幾多の事物を併せぐる際に、一つに締め括らずして其の一つに同等の重みがあるやうに列べて寫す詞姿である。例へば、「櫻及び桃を愛す。」「月雪花にあこがる。」といふ如く一括りにせずして「を、櫻を、桃を愛す。」「月に、雪に、花にあこがる。」と云ひ、「讀み書き且つ考ふるが余の業なり。」と統べずして「讀む、書く、考ふるが余の業なり。」とし、「淸心」と括らずして「淸心」と散列せしむる類ひで、かくすれば列擧された各の事物が一つに特別の注意を受けることとなる。此の法は忙がしい場合、情の激した場合、即ち分類統一の心作用の働く餘裕のない場合の出來事などを寫すに適して居る。此の法は主として結體の原理に屬して居る。 「霰みだ、しまき橫ぎる」「拜哮えるざま」と括れば文の調子が一變して活動の妙がなくなるであらう。