第一 主として結體の原理に基ける詞姿

 第十四章 換置法


 三七 對照法に似たる詞姿に換置法といふがある。換置法とは文勢をむる爲め、一たび用ゐた語を直ぐに撤回して他の更に適當な語を置き換ふる詞姿即ち出直し法である。例へば、不敬の行ひがあった敎育家をじて、「彼れの所爲は不穩當なり、不穩當といはむよりは寧ろ不都合なり否大不敬なり。」といひ、或は露兵は敗走せり、否豫定の退却を實行せり。」といふ類ひで、前の不妥當なる語を其のまゝに据ゑ置きながら、更に適當なる語を、改めてぐる所に味はひある描寫法である。此の詞姿は不穩當なる語と穩當なる語とを並べげて相對せしむる點よりいへば對照法に類し、より穩當なる語に進み行く點よりいへば漸法に類して居るが、ほ妥當不妥當を併せげ、又、より妥當なる語を換へ置く點に於いて獨立の詞姿たるを妨げぬ。換置法は主として結體の原理の上に立ち、ほ多少增義、融會、奇警、順感の四原理にも屬して居る。