スマホへ対応するための応急措置をしています。なのでレイアウトが少しヘンですけれども内容は全く問題ありません
  • 上にも書いたことですが。いちばん基本的な「くびき語法」というのは、数学でいう「カッコでくくる」という作業です。これは一歩進めていうと、カンタンに元の状態に戻せることを意味します。5a+5b5(a+b) になったように、 5(a+b) は誰にも間違いなく 5a+5b に直すことができるということです。

    なので、いちばん基本的な意味での「くびき語法」というのは、気の利いた表現でもありません。派手な表現でもありません。むしろ、ごく普通のあらわし方です。これが、このあと下で書くような「兼用法」や「破格くびき」となったとき、意外性を生みだすことになります。
  • :了解、分かる、知れる、察する、通じる、わきまえる、飲みこむ、把握、把捉、理解、承知、了承、了知、合点、得心、分かりきる、予測、見込み、見通す、見越す、予想、予期、見当、見抜く、予見、復原、復元、戻す、直す


  • 例文を見る例文を見る(末尾)
  • 引用は『学校のおじかん』2巻から。

    主人公は、青葉陸。

    陸は、どこにでもいる高校1年生の女の子、…のはずだった。
    が。ある日のこと、とつぜん彼女は「学園長」になる。これは、陸のおじいちゃんが遺言で「陸を学園長にする」と決めていたから。

    そんなわけで陸は、名門私立校・マガレット学園の学園長となった。しかも、このマガレット学園で高校生として学園生活をすごし、なおかつ学園長までこなすことになってしまう。

    そういったわけでクラスメートは、よそよそしい。高校1年生とはいっても、やはり学園長なのだから近づきにくい。なので陸は、なかなか学園になじんでいくことができない。だけども、そんななかでも、篠原楓と広田マキ(マッキー)という、2人の生徒と話をするようになった。

    そんな高校生活のなか。陸は、いきなり告白される。相手は、六條という男の子。「友だちから」といって親しくするようになった六條くんだったけれども、彼は明るくてやさしい。陸は、六條くんと付き合うことに決めた。

    だが、しかし。六條には、ねらいがあった。それは、学長室にある「実力テスト」の用紙。これを試験の前に手に入れて、いい点数をとろうというつもりだった。

    まあ、たしかにこの計画は、マッキー達の活躍によって防ぐことができた。六條は、テスト用紙を盗むことに失敗した。

    それでも、このことは陸にとってショックだった。六條には「アンタが学長だから近づいただけなんだ!」とまで言われ、すっかり落ち込んでしまう。

    そんなときのマッキーのセリフが、引用の場面となります。

    「あーゆう男」というのは、もちろん六條のことです。六條みたいなヤツばかりではないという、マッキーのことばを聞いた陸。そのときのモノローグが「くびき語法」になっています。 マッキーの
    言葉が
    夜空に
    響く

    遠く
    高く
    あたしの心
    にも——…
    さて。

    この文章は、もともと、 「マッキーの言葉が夜空に響く/あたしの心にも響く」 というものであったはずです。なのですが、つづいている文のなかに、「響く」という「動詞」が2回出てきます。そこで、これをひとまとめにして、「響く」ということばを1つにしました。その結果が、 「マッキーの言葉が夜空に響く/あたしの心にも——…」 というかたちになったわけです。そういったわけで、この省略は「くびき語法」と考えることができます。

  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「くびき語法」の、こまかい分類
  • どのように「レトリック用語」が使われているか
  • さて、じつは。
    「くびき語法」というレトリック用語は、いろいろなタイプのものを指ししめすためにつかわれます。これは、いろいろなレトリック研究家が、いろいろな意味で「くびき語法」という用語をつかった結果、かなり混乱しているためです。

    そこでとりあえず、下に図を書いてみました。
    この図をはじめてみた人は、多分「なんだコレ」という受けとり方になるでしょう。

    ですが、深く知る1の章を読み終わった後でもう一度この図を見てみる。そうすれば、ある程度イメージがわくと思います。

    これは、くくることになる単語と、くくられる単語。その間に、どのような関係があるかを示した図です。(スマホでは見づらいかもしれませんが、なるべく早くに修正します)
     
    文法的に
    正しいか 
    意味的に
    正しいか
     名称   記号
    くびき語法
    (広義の)
     
    ○  (狭義の)くびき語法   
    △(本来の意味と比喩的意味) 兼用法(異義兼用)
    △(具体的な意味と抽象的意味) 異質連立
    ×  意味論的破格くびき 破格くびき
    ×  ○ 統語論的破格くびき

    くわしくは、下にある以降と、リンクをご覧ください。

    なおこのサイトでは、『レトリック事典』をもとにして定義づけをしています。
  • いちばん単純な、ことばのくり返しを省略するだけのタイプ——「くびき語法」
  • これは、いちばんシンプルな「くびき語法」です。
    ようするに、ことばがダブって2回以上あらわれるのを避けるために省略して、1回だけにするというものです。

    この「くびき語法」のページで扱っているのも。基本的には、この「単純に、ことばのくり返しを省略するだけのタイプ」にあたります。

    『レトリック事典』が書いているように。これだけを限定して言いあらわすレトリック用語は、ありません。ですので、このタイプのことだけを指ししめしたいときには「くびき語法」と呼ぶしかありません。

    たとえば。 「1人目は、シャベルを手に取った。2人目は、つるはしを手に取って、3人目は、クマデを手に取った。」 という文があったとします。なのですが、この文章には「手に取った」という「動詞」が、何度も出てきます。つまり、そっくりの部分があるわけです。

    そこでこれを、ひとくくりにしてみます。つまり、「手に取った」という「動詞」を1つにまとめるわけです。

    すると。 「1人目は、シャベルを手に取った。2人目は、つるはしを、3人目は、クマデを。」 と変えることができます。このようにして出来上がるものを、「くびき語法」といいます。(なお、この例文は『ラルース言語学辞典』から借りてきました。)

    ようするに、似たようなことばをくり返すのがメンドウだということです。ことばが反復して登場するのがイヤなので、1つにしてしまおうというわけです。

    まあ。
    「メンドウだから」とか「イヤだから」とかいった理由が書いてあることからも、想像がつくことですが。この意味での「くびき語法」は、あまりハデな効果を生みだすものではありません。
  • 本来の意味と比喩的な意味とを兼ねて、1語に省略するタイプ
  • ——「異義兼用・兼用法・双叙法・一筆双叙法」
  • くくり出した「動詞」を元にもどしてみる。すると、そのことばが片方ではたらいている意味と、もう一方ではたらいている意味とが違う。そういったものが、このタイプにあたります。

    いいかえれば。1つしかないことばが、くびきのように2つ以上のことばへと結びついている。その2つ以上のことば、それぞれとの関係で、くびきとなっている語の意味が別になっているというものです。

    とくに。片方では「本来の意味」となっているが、もう一方では「比喩の意味」となっていることが多くあります。

    このタイプの呼びかたは、いろいろあります。「兼用法」とか「異義兼用」とか「双叙法(雙叙法)」とか、もしくは「一筆双叙法(一筆雙叙法)」とか呼ばれます。

    このタイプに含まれるものとしては。たとえば、
    • 「思惑だの褌(ふんどし)なんてえものは、えてして外れやすい」 
    • ——(五代目古今亭志ん生『びんぼう自慢』)
    といったものが、あげられます。(参考:『レトリック事典』)

    というのは。これをよく見てみると、
    もとに戻すと、「褌(ふんどし)が外れる」のほうは「本来の意味」ということができる。だけども、「思惑が外れる」のほうは「比喩の意味」といえる。 からです。

    くわしくは、「兼用法」のページをご覧ください。

  • 片方にしか結びつかないような語が、2つ以上のことばに結びついているタイプ
  • ——「破格くびき」
  • くくり出した「動詞」を元にもどしてみる。すると、片方とは結びつくけれども、もう一方とは結びつかない。そういったタイプが、これに該当します。

    このタイプのものだけを呼ぶのには、「破格くびき」という名前が一般的です。あと「不一致的軛語法」とよばれることもあります。

    このタイプに含まれるものとしては。たとえば、
    • 「私は最近はじめてこの手でこの目で触れたのだ」 
    • ——(吉本ばなな『キッチン』)
    といったものが、あげられます。(参考:『レトリック辞典』)

    というのは。これをよく見てみると、
    もとに戻すと、「この手で触れたのだ」+「この目で触れたのだ」となる。「この目で触れる」という表現は合わない。 からです。

  • 「具体的なことば」と「抽象的なことば」とを、1つの語で結びつけているタイプ
  • ——「異質連立・両義法」
  • くくられていることばが、「具体的なもの」と「抽象的なもの」、という異質な結びつきとなっている。そういったものが、このタイプとなります。

    このタイプに含まれるものとしては。たとえば、
    • 「ぼくは持っていた。汚れたレインコートと、夢を」 
    • ——(菅原克己『マキシム』)
    といったものが、あげられます。(参考:『レトリック事典』)

    というのは。これをよく見てみると、
    「汚れたレインコートを持っている」のは「具体的なもの」だけれど、「夢を持っている」のは「抽象的なもの」といえる。 からです。

    ですが。
    「異質連立(attelage)」というレトリック用語は、なぜかフランスだけで使われているものです。

    フランス語「wikipdia」の「Attelage」には、ほんの少しだけ説明が書いてあります。
    2) en rhtorique, un attelage est l'association d'un terme concret et d'un terme abstrait. というふうに。

    見てのとおり、フランス語です。日本語に翻訳すれば、
    2) レトリックでは、attelageは具体的な語と抽象的な語とを結びつけたものをいう。 くらいの意味だとおもう。私(サイト作成者)は、フランス語を習ったことがないので自信はちっともないけれど。

    なお。
    どれか1つを引き立たせるために、ほかのことばは「添え物」として置かれていることも多くあります。
  • 深く知る2日本語では、「くびき語法」は使いにくい
  • ことばの性格として。
    ヨーロッパ系の言語では、まったく同じ単語が何回も出てくることをイヤがります。そういった事情もあって、ヨーロッパ系のことばの中では、わりと「くびき語法」がよく出てきます。

    それは。
    反対にいえば、あまり日本語では見かけないということでもあります。それはつまり、もし日本語で「くびき語法」を使ったばあいには、かなり「目を引く」ものになるということでもあります。
  • 深く知る3ふき出しのなかでの「くびき語法」
    • ——『テニスの王子様』7巻179ページ(許斐剛/集英社 ジャンプ・コミックス)
      • 海堂「 精神力
      • で勝つ
      • 桃城「体力
    • ——『テニスの王子様』7巻179ページ
      (許斐剛/集英社 ジャンプ・コミックス)
ここから下に書くのは、私(サイト作成者)の個人的な意見ですが。

例えば、右のような「ふき出し」があります。

注目したいのは、その「ふき出し」の作りかたです。

海堂(右)と桃城(左)は、同じテニスのチームで、ダブルスとして試合をしている最中です。

ここで海堂は「精神力で勝つ」と言っていて、桃城は「体力で勝つ」と言っています。ですが、「で勝つ」の部分は、共通しているということで、一緒になっています。つまり、ここで書かれている「で勝つ」という動詞は、「精神力」と「体力」という二つの名詞にかかっていることになります。

たまたま読んでいたのが『テニスの王子様』7巻だっただけです。これが特別というわけではなく、いろいろなコミックで使われています。

「ふき出し」になると、「くびき語法」は、この例のようなかたちで表現されることになるのではないか。そのように思います。