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諷刺 ふうし satire
——『監督不行届』表紙(安野モヨコ/祥伝社) 『監督不行届』

安野モヨコ
——『監督不行届』表紙
(安野モヨコ/祥伝社)


定義重要度

諷刺は、人や社会を当てこすって批判する、というレトリックです。 つまり、ある特定の人間、またはある特定の社会現象を笑いの対象とすることで、現実の中に隠れているものをあばきだして批判を加えようとするものです。


効果

効果1「諷刺」の対象を、見下したり軽べつしたりする

「諷刺」は、その対象となっている人の価値を低くみたり、引きずりおろしたり、といったこともします。
:おとしめる、見下す、さげすむ、軽べつ、侮辱、バカにする、軽んじる、軽べつ、蔑称、悪意
効果2遠回しに伝える

「諷刺」は、批判したいことをそのまま、ダイレクトに伝えるものではありません。裏側に批判したいという気持ちを含めます。表面上は、おだやかなものになっています。
:間接的、遠い、遠回し、婉曲、やわらかい、やわらか、ほのめかす、におわせる、示唆、ぼかす、ぼやかす、寓する、言いかねる
効果3権威へ反抗し、その理不尽さを明らかにする

非難の対象になるのは、権威をもつものです。権威の理不尽なようすを写しだすのが、「諷刺」の特徴です。
:批判、あばく、暴露、暴きだす、権威への反抗、逆らう、手向かう、立ちむかう、抵抗、鋭い、辛辣、口荒く、攻撃、とがめる、とがめ立て、責める、責めたてる、不合理、不正、理不尽、不条理
効果4滑稽、ユーモア

表面上は、バカらしいストーリーが描かれます。ですが裏側では、その対象をあざけり嘲笑するという考えが込められています。
:滑稽、下らない、ナンセンス、バカらしい、バカバカしい、おもしろい、おかしい、ユーモラス、ユーモア、笑い、笑う、からかう、冷やかす、揶揄、はやし立てる、ヤジ、あざけり、あざける、嘲笑、薄笑い、面白おかしい

使い方
使い方1社会や人間などを、遠回しに批判する

わざと遠回しに表現することで、人間と社会の矛盾をあばく。それが「諷刺」です。



例文を見る例文を見る(末尾)

例文は『監督不行届』から。

この表紙だけ見ても、十分に「諷刺」です。監督が、身の回りのことまでできないような、そんなオタクな人だ。その気持ちが『監督不行届』という言葉から裏に読みとれます。ですので、表紙から、十分に「諷刺」でしょう。

で、本の表紙を開くと、こんな言葉が書いてあります。
※このマンガはフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。
ん〜。このマンガは、漫画家の「安野モヨコ」と、映画・アニメ監督の「庵野秀明」とが結婚した話が書いてあるのではないか?
その新婚生活での「庵野秀明」のオタクっぷりが「諷刺」として書かれているのではないか?

そう思った方、それが正解です。この本を最後のほうまで読んでいくと、
冒頭の「このマンガはフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません」という文言は、軽いシャレとして入れてもらいました。
と書いてあります(141ページ)。

ですので、安心してご購読ください。

…ここまで書いて、ふと思った。ここまで書いてきたことは全て、「庵野秀明」と「安野モヨコ」との結婚を知っている人、というかそれ以前に、この2人を知っていることが前提となっている!

しかし、「庵野秀樹」と「安野モヨコ」とを知らないような、まるでオタク的ではない生活を送っている人は、この本を読まないでもかまいません。そのような人は、対象としている読者層ではありません。

なお、もちろん中身も「諷刺」です。
例えば結婚式では、お世話になった方々への同人誌を配る(8ページ)。ナゼ、同人誌を配るのかはナゾだけど、そのようなオタク的な行動が、この本にはいっぱい詰め込まれています。もちろん「ノロケ」ではなく「諷刺」として。

ただ。
こうやって「結婚式で同人誌を配った」と書くと、なんだかスゴい結婚式だったみたいに感じるかもしれません。

ですが、この結婚式に出席した、吉住渉さんが書くところによれば、それほど奇妙奇天烈な結婚式ではなかったようです。『ウルトラマニアック』(吉住渉/集英社 りぼんマスコットコミックス)2巻に描かれてある、「フリートーク・スペシャル」のコーナーでは、次のように描写されています。
同業の安野モヨコ嬢の
結婚パーティーのビンゴで当たって—(中略)—。

ちなみに新郎は
「エヴァンゲリオン」の
庵野監督
とても素敵な
カップルです♡
とのこと。やっぱり、この『監督不行届』というマンガは、「事実をありのままに描いて諷刺したもの」ではないようです。いや、事実を歪曲して誇張するところが、まさに「諷刺」なんですが。



レトリックを深く知る

深く知る1「諷刺」の持っている要素

「諷刺」の持っている要素をならべると、つぎのことがいえます。
  1. 対象:個人、社会、または人間一般。特に政治家や文学者など。
  2. 方法:愚行、偽善、腐敗、堕落、欺瞞などを指摘し、批判したり、または笑いものにする。
  3. 手段:間接的な手段をとることが多い(「寓話」や「昔話」などを使う)。
  4. 要素:機智(機転が利いていること)、皮肉(相手の欠点や弱点に対する遠まわしの非難)などがある。
以上のパターン分けは、『英文学におけるユーモアと諷刺の伝統』(三宅川正/関西大学出版部)を参考にしました。

深く知る2「諷刺」と「皮肉法」との関係

この「諷刺」と同じく人を攻撃するレトリックに、「皮肉法」というものがあります。この「皮肉法」も、かなりの部分で「諷刺」と関連しています。

「諷刺」をするばあいには、たいてい「皮肉法」が用いられます。また、間接的に攻撃や批判をするという点でも、共通しています。

深く知る3satireの語源
なお、英語訳に書いた"Satira"の語源については、意見が分かれています。

ですが"Satire"の語源は、ラテン語で「盛込み料理」「寄せ集め」の意味でにあたる"Satura"だというのが平均的な考えのようです。




レトリックの呼び方

呼び方 諷刺


関連レトリック

皮肉法偽悪的讃辞反語的讃辞、反語的緩和、反語的期待、反語的否認揚げ足取り修辞的疑問、冷嘲法、愚弄的皮肉、嘲的的あてこすり、愚弄、嘲弄、迂言法虚言

参考資料

●『英文学におけるユーモアと諷刺の伝統』(三宅川正/関西大学出版部)

イギリスでの諷刺を、歴史順に展開しています。タイトルのとおりです。このページを書く時に、メインの資料にした本です。
●『諷刺・アイロニー・ヒューモア』(新保昇一/近代文芸社)

ジョージ・オーウェル『動物農場』など、個別の諷刺文学について書かれています。前半の部分に、「諷刺」について書かれています。
●『空想旅行の修辞学—「ガリヴァー旅行記」論—』(四方田犬彦/七月堂)

諷刺文学にの中で、スウィフトの『ガリバー旅行記』に重点をおいています。
●『イギリスの諷刺小説(内多毅[監修]、 泉谷治 [ほか] 著)

この本は、5人の共著です。色々な方向から「諷刺」について述べています。
●『風景の修辞学(エコリチュール)』(森晴秀[編]/英宝社)

最初から読むと、まず松尾芭蕉について書かれていたりしています。ですが本論を見てみると、「諷刺」について意欲的に論じられています。



余談

余談1ちょっとだけ『監督不行届』が読めるページ

なお。
『監督不行届』の第壱話と第弐話を読むことができるサイトがあります。
「FEEL YOUNG net」の「監督不行届」のページ
http://www.shodensha.co.jp/fy/comic/kantoku/
発売元の「祥伝社」の中にあるページです。


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