このページは、 のページにあったものを引き継いでいます。
TOPへ 50音順 使う目的別 佐藤信夫『レトリック事典』の分類 中村明『日本語の文体・レトリック辞典』の分類
 
韻文 いんぶん prosody
——『絶対可憐チルドレン』1巻表紙(椎名高志/小学館 少年サンデーコミックス) 『絶対可憐 チルドレン』 

             椎名高志
——『絶対可憐チルドレン』1巻表紙
(椎名高志/小学館 少年サンデーコミックス)


定義重要度4

韻文は、音の調子がリズミカルになるように、決まった順番にならべることです。この「韻文」には大きく分けて2つの種類があります。
 1)「5音」と「7音」でそろえるというもの(=音数律)。
 2)最初か最後の音をそろえるもの(=押韻)
のに2つに分けることができます。

この「韻文・韻律」のページでは、「音数律」と「押韻」の両方に共通するものを書いておきます。「音数律」や「押韻」だけが持っている特徴については、「音数律」と「押韻」それぞれのページをご覧ください。


効果

効果1ことばが調和のとれたものになる

「韻文」は、ハーモニーのとれたことばを生みだします。つまり、バランスのとれたのある言いまわしをすることができるようになります。
:均衡、均整、調和、ハーモニー
効果2リズミカルなものになる

リズミカルな言いまわしになるのも、「韻律」の大きな効果です。「音数律」と「押韻」のどちらであっても、リズムを出すことができます。
:リズミカル、歩調、足並み、音楽性、節、節まわし、声調、音調、音律
効果3快いフレーズを作ることができる

リズミカルなものは「快い」フレーズとなります。言いかえれば、心がすんなりと受け入れてくれる表現を生みだすことができます。
:すんなり、すらすら
効果4響きの良いフレーズを作ることができる

「快いフレーズ」というのと関連するのですが。耳にしたときに、音のよさを伝えられるような表現にすることができます。
:響く、響きがよい、響き、反響

使い方
使い方1韻文には「音数律」と「押韻」がある

上に書いたように、リズム感を出すためには大まかにいって2つの方法があります。1つは、「5音」や「7音を使うもの(=音数律)」。もう1つは、「頭韻」や「脚韻」となる文をつくること(=押韻)です。
:音数律・押韻・頭韻・脚韻
使い方2ことばをルールどおりに並べる

押韻」では、同じような音をくり返すことになります。また「音数律」では、音の数をそろえて配置することになります。つまり「韻文」をつくるためには、ことばをルールどおりに割りふる必要があります。(※具体的な方法については、「音数律」と「押韻」をご覧ください)
:決まり、規則、ルール、メリハリ

注意

注意1むやみに使うと逆効果

「短歌」とか「頭韻」とかいったものを使って、1つの「詩」をつくる。たしかに、そのばあいには「韻文」のルールに合わせて韻を踏んだり、音の数をそろえたりするのは自然です。なのですが、コミックスの「ふき出し」などで、そういった「韻文」を使いすぎるのは危険です。
注意2ことばの表面だけを読むだけになってしまう

「韻文」と呼ばれる「音数律」と「押韻」。こういったものは、リズムにのって読みとることができます。それは、上に書いたとおりです。けれども、そういったリズムを感じただけで読み終えてしまいがちなことも、たしかです。「韻律」をつかった文を、「韻律」の読みとりだけで終わらせてしまう。そういった可能性が、十分にあります。
:推し量る、汲みとる、推測、受けとる、解釈する、把握する



例文を見る例文を見る(末尾)

引用は、『絶対可憐チルドレン』1巻の表紙です。

このコミックスのタイトル、つまり本の名前が「韻文」だといいたいのです。

でも。なんで、このコミックスのタイトルを出してきたか。つまり、どうして「韻文」を説明するために、このコミックスのタイトルが使われることになったのか。そのワケは、
このタイトルには「音数律」と「押韻」の両方が使われている
と感じたからです。


注意 1「音数律」が使われているかどうか

まず、「音数律」のほうから考えてみると。
絶対可憐 チルドレン
ぜったいかれん ちるどれん
7音 5音
というふうに、「7音」と「5音」になっている。なので、いちおう七五調ということもできそう。なので、このタイトルは「音数律」ということにしておきます


注意2「押韻」が使われているかどうか

これも上に書いたのと同じように、調べてみる。すると、
絶対可憐 〜れん
チルドレン 〜れん
となっています。ここには、「脚韻」っぽいのが登場しています。なので、この部分には「脚韻」が使われている。かなり苦しいけれども、そういうことにします

なお。
英語で“children"を発音した場合には、日本語の「チルドレン」とは大きなズレがあります。なので、突きつめると正式な「脚韻」とは言いづらいのかもしれません。

ですが。
「押韻」と「音数律」の両方が一度に出てくるというのは、めずらしいことです。なので、例文として『絶対可憐チルドレン』というフレーズを採用しました。



レトリックを深く知る

深く知る0「韻文」の周りにあるレトリック

このページであつかっている「韻文」に近いレトリックとしては、つぎのようなものがあります。

くわしいことについては、それぞれページをご覧ください。

そういうことにしますので。
これより先で書いていくことは、とくに「韻文」との関係でポイントとなってくるもの。それに限って書いていくことにします。

具体的にいえば、
深く知る1「韻文」と「散文」との違い


深く知る2「韻文」と「ことば遊び」との区別
という2つのことについて、深く掘り下げていってみたいと思います。

深く知る1「韻文」と「散文」との違い

先ほどあげた画像に書いてあるように。

「文」というカテゴリには、「韻文」と「散文」が入ります。つまり、「韻文」というものであれば「文」といえる。また、「散文」に当てはまるものならば「文」となる。そういうことです。

そして。
その区分けをつかえば、ほとんどのものは問題ないはずです。

たとえば、マンガにある「ふき出し」に書いてある文字。これは、99%くらい「散文」です。

それに対して、俳句とか短歌とか。これは、ほぼ間違いなく「韻文」です。

そしてそれは、たしかに当たっています。

しかし、じつは。
かなりビミョーなものもあります。つまり、お手軽に区別することができないものが、あったりするのです。

たとえば。
世の中には「自由詩」というタイプの「詩」があります。この「自由詩」では、音の数が「7音」や「5音」とは限りません。また「韻を踏む」ことも、していません。

では、この「自由詩」なるもの。これは、「音数律」もないし「押韻」もない。だから「散文」だ
…となりそうなのですが、そのように結論づけることはできないのです。

むしろ、「詩」なのだから「韻文」だろう、と考える。それが一般的です。

では。
どうやって、「韻文」なのか「散文」なのかを区別すればいいのかというと。おどろくなかれ、
「詩」というジャンルに含まれるから
だから「韻文」なのだと。

やたらと分厚い『国語学大辞典』(国語学会[編]/東京堂出版)という辞典。この辞典に照らすと、そのようなことみたいです。

いちおう、その部分を引用しておきます。
韻文の認定には、言語現象の観点と文芸様式の観点との二種の観点がある。言語現象の観点から、リズミカルな文章表現であっても、小説を、文芸様式の観点からは、韻文とは認定しない。また、韻律性を排除する自由詩・散文詩・無韻詩などは、文芸様式として韻文たるべき詩の範疇においてとらえるとき、韻文と認定される。
とのことです。やたら漢語がおおいので、ビックリするわけなのですが。しかも、ここに書かれている
「韻文たるべき詩の範疇においてとらえる」
というのが、読みとりにくい言いまわしになっているので困るのですが。たぶん結局、なにが言いたいのかというと。
「韻文」というジャンルと、「散文」というジャンル。この2つのジャンルは、誰の目にも見ても明らかな区別ができるわけではない
ということだと思います。

この執筆者は、上で引用した文のつづき。そこに書いてあることが、証拠となるのかもしれません。つまり、
『平家物語』の文章は、文芸様式の観点から、語り物の詞章として認定するときは、韻文(的)で、物語の文章として認定するときは、散文(的)ということになる。
と書いています。つまり、同じ1つのモノだとしても。そのものを見る視点が変わると、「韻文」になったり「散文」になったりする。と、そういったわけです。

ここのまとめとして。いままで書いてきたことを、「一行」で書いておくと。
散文+韻文=文 ではない
ということです。

深く知る2「韻文」と「ことば遊び」との区別
「ことば遊び」とはいっても。このページで、すべての「ことば遊び」を取りあつかうわけではありません。「語路合わせ」とか「地口」とかいった、「韻文」と関連のありそうなものに限って、書いていくことにします。


深く知る2「語路合わせ」で使われている音の数

たとえば「語路合わせ」。ここには、五音や七音といった「音数律」が多く使われています。誰でも見たことがありそうな「元素記号」の覚えかたを見てみると。
水兵リーベ 僕の船
H He Li Be B C N O F Ne
すいへいりーべ ぼくのふね
7音 5音
というふうに、「7音」と「5音」になっている。

ここから先の(Na以降の)覚えかたには、いろいろな種類があるみたいなのです。そして、いろいろな種類のうち「どれが正解で正しい」とかいったものでもないのですが。なるべく7音や5音で暗記しようとする、といったものが多いと思います。


深く知る2「語路合わせ」は「散文」でいいのか

そして。上に書いたところが、まさしく問題となるポイントです。まとめて書くと、それは、
「散文」に振り分けられたはずの「語路合わせ」で、7音や5音ものが多く見つかる。
こういったものは、「韻文」なのではないか。
ということです。

そして。その解答としては、
「語路合わせ」は、あくまで「散文」に含まれる。
という結論となります。

それはナゼかというと。やっぱり『国語学大辞典』の
韻文の認定には、言語現象の観点と文芸様式の観点との二種の観点がある。言語現象の観点から、リズミカルな文章表現であっても、小説を、文芸様式の観点からは、韻文とは認定しない。また、韻律性を排除する自由詩・散文詩・無韻詩などは、文芸様式として韻文たるべき詩の範疇においてとらえるとき、韻文と認定される。
が登場するからです。これに照らして考えると、そうなってしまうのです。言いかえれば、
リズムがあったとしても「文学様式」として「韻文」といえないものは、
「散文」に属することになる。
という結論が出てしまうのです。なので「語路合わせ」は、あくまで「散文」なのです。



レトリックの呼び方

呼び方5 韻文
使い方3 韻律
使い方2 プロソディー



関連レトリック

音喩継起的音喩、半諧音、押韻頭韻脚韻音数律畳句法畳語法隔語句反復復言法畳音法同音集中反復法回文

参考資料

●『説得の文章技術(講談社現代新書685)』(安本美典/講談社)
「音数律」と「押韻」の両方を取りあげている書籍は、それほど多くありません。その中で、めずらしくこの本は「音数律」と「押韻」をいっしょに扱おうとしています。新書本なので手に入れやすいと思うこともあって、この本をオススメしておきます。
●『万葉修辞の研究〈山口正著作集 第一巻〉』(山口正/教育出版センター)

この本は、タイトルから分かるように、「万葉集」と中心として「韻文」を見ていこうとするものです。だけれどもこの書籍は、注目しているポイントが少しちがっています。「万葉集にだって、同じ音のくり返しはたくさん見つかる」というのが、この本の主旨です。そういったことも考えて、この本をあげておきます。



余談

余談1タイトルなんて短いものが「韻文」といえるか

結論から書くと、「韻文」といえると思います。

『説得の文章技術(講談社現代新書685)』(安本美典/講談社)という本が、
セブンイレブン いい気分
というキャッチコピーについて、「音のくり返し」と「音節(拍)」のくり返しを認めています。

そういったことなので。
まあ、固いことを言わなければ問題ないと考えるわけです。


このサイト全体からのサーチ
 
「使う目的別のページ」の中からサーチ
TOPへ 50音順 使う目的別 佐藤信夫『レトリック事典』の分類 中村明『日本語の文体・レトリック辞典』の分類