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挿入法  そうにゅうほう parenthesis
——『R.O.D—READ OR DREAM—』1巻89〜90ページ(倉田英之・綾永らん/集英社 ジャンプ・コミックス・ウルトラ)
ミシェール さあ次は
マギーちゃんの
番よ」
マギー …これは
友達の友達の
友達に聞いたん
だけど……」
アニタ まー姉
友達いない
じゃん
マギー ぐさっ
ミシェール ぐさっアニタ
ちゃんっ
マギー …大学生の
貧乏な男の人の
話なんだ
そのには
本のコレクターの
友達がいて…
珍しい本をいっぱい
持ってたんだって…」
——以下、怪談が続きます。
——『R.O.D—READ OR DREAM—』2巻89〜90ページ
(倉田英之・綾永らん・スタジオオルフェ・アニプレックス
/集英社 ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)


  
定義重要度

挿入法は、文の流れをいったん中断して、ある程度の長さの言葉を割り込ませるレトリックです。いいかえれば文の途中で、文のメインになっていることばとは違ったことばを入れて、そのあとでもとの話にもどるというものです。


  
効果

効果1話の途中で、余談を組み入れることができる

話の流れの中で、わき道にズレた余談を書きたくなったばあい。そのときには「挿入法」の出番となります。
:余談
効果2コメントや脚注の手段として使うことができる

 
コメントや注釈を組み入れたい。そんな時には、この「挿入法」が活躍します。
:コメント、評する、評、批評、注釈、注する、注解、説明、解説、叙説、補説、弁明、弁解、釈明
効果3話に奥行きとふくらみを与える

 
いろいろな方向から、同じモノゴトについて写しだす。このことによって、話に厚みを加えることが出来ます。
:奥行き、ふくらみ、厚み、厚さ、まろやか

使い方
  使い方1挿入した部分を外したとしても文が成り立つ

 
「挿入法」というレトリックで一番大切なこと。それは、もし挿入法として挟みこんだフレーズを取り外したとしても、文が成り立つことです。
:独立、ひとり立ち、自立
使い方2文の流れに介入する

 
「挿入法」は、メインとなっている文に介入する「レトリック」です
:介入、干渉
使い方3( )カッコやなどを使うことで、挿入であることを明らかにしておく

 
( )カッコや——ダッシュなどを使うことで、そういったものに囲まれた部分が挿入であることが分かるようにしておくことが大切です。
:(叙述を)挟む、はめる、はまる、はめ込む、はさみ込む、差しいれ、挿入

注意

  
注意1長い挿入は、メインの話がおろそかになってしまう

 
あまりに長いあいだ「挿入法」を使いつづける。すると、メインのほうのストーリーがおいてきぼりに遭って、全体として分かりにくい文ができあがってしまいます。
:長い、長ったらしい、長々と、冗長、ややこしい、面倒、繁雑、散漫、不明瞭、不鮮明。ぼんやり、漠然、もうろう
注意2乱用すると、文の流れが悪くなる

  
「挿入法」は、使い勝手のあるレトリックです。そのため、いろいろなシーンで使いたくなるレトリックでもあります。けれども、この「挿入法」を使いすぎると、文章の流れが悪くなります。ですので、使うときには注意をはらっておく必要があります。
:阻害



例文を見る例文を見る(末尾)

例文は『R.O.D—READ OR DREAM—』2巻から。

ミシェール、マギー、アニタの三姉妹は、香港で探偵社をしている。その名前は「紙姉妹探偵社」。

なぜ「紙姉妹」という仕事をしているのか。それは、ミシェール、マギー、アニタの三姉妹は「紙使い」で、紙をあやつって自在に攻撃も防御もできる、そんな三姉妹の探偵社だから。

でも、引用したシーンは、それとはあんまり関係ないのです。

ただ、三女のアニタは、ミシェールのことは「みー姉」、マギーのことは「まー姉」と呼びわけています。これが分からないと引用した部分の意味が分からなくなってしまうので、この「みー姉」「まー姉」は覚えておいてください。

で、このあたりの話の流れを追うと、次のようになります。

暑い。エアコンを買う金がない。…となれば、ここは「怪談話」しかない。
そんなわけで、「怪談話」をすることにした三姉妹。だけど、いくら「ムードが大切」とはいっても、窓を閉めて毛布をかぶっては、よけい暑いと思う。

そんな中で、まずはミシェールがトップバッターで、
「これは友達の友達に聞いた話なんだけど……」(83ページ)
と、「怪談話」をする。

で、次がマギーの番ということで、マギーが「怪談話」を始めようとする。そこが引用のシーン。
「…これは友達の友達の友達から聞いた話なんだけど……」(89ページ)
と語り始めようとしたところ、アニタのツッコミが入る。
まー姉
友達いない
じゃん
と、話を中断させるアニタ。そして、
ぐさっ
と思うマギー。ここが「挿入法」にあたります。なぜなら、アニタによって「怪談話」が中断されてしまったからです。

けれども、大切なポイントが1つあります。それは、中断された「怪談話」を、マギーは再開して続けている点です。
反対に言えば、もしここでマギーが「怪談話」をやめてしまったら、「頓絶法」に近くなります。

なお。
「これは友達の友達に聞いた話なんだけど……」
というセリフと、
「…これは友達の友達の友達から聞いた話なんだけど……」
というセリフが、かなり似ている。そのように考えると、「照応法」のレトリックも同時に使われていることになります。



レトリックを深く知る

深く知る1「挿入法」と「脱線法」との関係
「挿入法」が引きのばされると、「脱線法」になります。「脱線法」というレトリックは、その名の通り話が「脱線」するというレトリックです。

深く知るa『レトリック事典』での「挿入法」の定義
『レトリック事典』は、「挿入法」を細かく分けることには否定的です。つまり、確かに伝統的なレトリックでは「挿入法」と「挿入句」とを区別していた。けれども、これを下位の種類に分類することが有意義かどうかは別である、と。

けれども、このサイトでは伝統的レトリックにしたがっておきます。つまり、いちおう「挿入法」と「挿入句」の区別をつくっておくことにします。

なお、念のために書いておくと。
『レトリック事典』は、「挿入法(parenthesis)」のことを「(自立)挿入語句」と呼んでいて、「挿入句(parembole)」のことを「(依存)挿入語句」と呼んでいます。

深く知るb『日本語レトリックの体系』での、「挿入法」の説明
それから。
『日本語レトリックの体系』によると、「折挿法」というレトリックがあります。この「折挿法」は、「文の途中で他の文章をはさみ、そして再びもとの文に戻って続ける」という趣旨の説明がされています。

ですので。
この「折挿法」は、「挿入法」か、もしくはそれに近いレトリックと位置づけることができます。

深く知る2英語名の「parenthesis」

上に書いた英語名の「parenthesis」を省略して書くと、「parens」になります。そして「parens」をカタカナ語に直すと、「パーレン」となります。物知りな方なら分かると思いますが、「パーレン」とは「括弧(かっこ)」のことです。

このことからもわかるように、挿入することになる言葉は、カッコ( )やダッシュ——などで示されるのが普通です。

深く知る3「挿入法」含まれるレトリック
この「挿入法」の系列には、次のようなレトリックがあります。
  • 挿入句:挿入する部分が短くて、もとの文を中断させずに補足する程度に限られるレトリック
  • 挿入法:文の流れをいったん中断して、ある程度の長さの言葉を割り込ませるレトリック
  • 挿入節:文が中断され、かなりの長さで話が横にそれるレトリック
  • 脱線法:大がかりな挿入法で、話の本筋とは関係ない話が長い間、展開するレトリック
くわしくは、それぞれの項目を参照してください。




レトリックの呼び方

呼び方 挿入法
呼び方 語句挿入
呼び方 折挿法


  
関連レトリック

断絶法、頓絶法黙説法疑惑法、懸延法、挿入句挿入節、脱線法

参考資料

  
●『日本語修辞辞典』(野内良三/国書刊行会)

『「日本語」修辞辞典』という名前の通り、日本語での例文がたくさん掲載されています。
●『くりかえしの文法—日・英比較対照—』(牧野成一/大修館書店)
 
『くりかえしの文法』というタイトルです。なので一見すると、あまり「挿入法」と関係がないと思いがちです。しかしこの本は、かなりのページ数を使って「挿入法」について説明しています。気になった人は、第4章をご参照ください。


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