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見立て みたて ——
——『ざ・ちぇんじ!』2巻45ページ(山内直美・氷室冴子/白泉社 花とゆめCOMICS)
兵部卿宮 管弦の宴に花を添えていた月も
影が薄くなってしまった」
宰相中将 ……」
(何言ってるんだ
このすみれ族が…!
好みの美形なら
男でも女でもモノにしちまう
節操なしのくせに)
(綺羅にまで手を出す気か!?)
では
“かつ見れど
うとくもあるかな
月光のいたらぬ里も
あらじと思えば”

という心境ですか
あなたにような目で見られては
綺羅も困るばかりでしょう」
兵部卿宮 ほう…
では君は…
“月光の至らぬ里こそ
あらまほしけれ”
というわけですか」
——『ざ・ちぇんじ!』2巻45ページ
(山内直美・氷室冴子/白泉社 花とゆめCOMICS)


定義重要度

見立ては、あることを別のことばで、たとえる(見立てる)表現です。


効果

効果1「見立てる」ことによって、連想を生む

「見立てるもの」と「見立てられるもの」。その2つの相互作用が連想をうながし、趣のある表現を作られます。
:相互作用、互い、連想
効果2ものごとのの見かたを、再構成する

「見立て」によって、いままで考えもしなかったものが結びつけられる。それことによって、ものごとの見かたが組み立てなおされることになります。
:再構築、再構成、組み立て、建て直す、再建

使い方
使い方1直接のことばを使わずに、間接的になぞらえる


伝えたいと思っているものを、他のものになぞらえる。間接的に表現する。それによって表現をするのが「見立て」です。
:なぞらえる、代わり、準じる、例える、例え、比喩、見立てる、擬する、間接



例文を見る例文を見る(末尾)

例文は『ざ・ちぇんじ!』2巻。

ここで話の中に登場する「綺羅」は、ほんとうは女。それなのに、女であることを隠して、男として宮中にでるというのがストーリー。

だけれども、その女らしい美しさゆえに、まわりにいる同僚の男たちから好意のまなざしを向けられています。というか、「綺羅」は女なんだから、女らしい美しさは当たり前だけど。

そして。
とくに、バイ・セクシュアルで有名な兵部卿宮あたりは、綺羅のことを狙っていそうなかんじがします。

そんな中で、綺羅と親しい友達になっている宰相中将が詠んだ和歌が、上にあげたもの。
“かつ見れど うとくもあるかな
月光のいたらぬ里も あらじと思えば”
この歌で表面的に詠まれているのは、
「月の光の美しさが自分だけに向かって輝いていない」ということを嘆いたものです。

ですが、その内なる意味は
「綺羅の美しさが自分だけに向かって輝いていない」ということを嘆いているおもわれる、バイ・セクシュアルの兵部卿宮を皮肉った歌になります。

なお、もういちど書くけれども。綺羅は本当は女だけれども、あくまで男として出仕しているわけです。なので、彼女(彼?)に恋心を寄せるということは、バイ・セクシュアルになってしまうのです。周囲では、そう考えているわけです。その点を皮肉っているわけですね。

で要するに、この和歌は、このシチュエーションでは「月でもって綺羅を見立てる」ということになります。これが「見立て」になるわけです。



レトリックを深く知る

深く知る1日本文学での「見立て」
日本の「短歌」や「俳句」ではよく出てくる、一般的なテクニックです。実質的には、「比喩」と呼ばれるものを広く範囲におさめる語です。

深く知る2「見立て」が使われた時代

「見たて」を使われたのは、おもに『古今和歌集』です。『万葉集』の時代ならば、直接的に描かれていたはずのもの。そういったものが、間接的なかたちのよって表現されることになります。




レトリックの呼び方

呼び方 見立て


関連レトリック

音数律枕詞序詞掛詞、縁語、古語法

参考資料

●『古典文学レトリック事典』(國文学編集部[編]/學燈社)

古典文学で使われているレトリックを知りたければ、最初に目にするものだと思います。限られたスペースの中で、必要なことが書かれています。
●『日本のレトリック—演技する言葉—(ちくまライブラリー8)』(尼ヶ崎彬/筑摩書房)

こちらは、見立てについて深いところまで掘り下げたもの。「見立て」に多くのページを割いています。



余談

余談1引用の部分の続き

引用の部分をみればわかりますが、話にはつづきがあります。つまり、兵部卿宮のほうも反撃に出ているのです。
“月光の至らぬ里こそあらまほしけれ”
というのは、意訳すれば「月の光が自分だけに輝いていればよいのに」という感じです。

ですがこれも、綺羅についての「見立て」になっています。なので「綺羅の美しさが自分だけに輝いていればいいのに、と思っているんだろう?」という真意があります。宰相中将にたいして、「お前だってそう思っているんだろう?」、と皮肉の仕返しになっているわけです。

余談2この和歌は、もともとは紀貫之が作ったもの

ちなみに、引用したこの和歌はもともと、『古今和歌集』におさめられている紀貫之がつくった歌です。
もちろん紀貫之の歌、それ自体には、こういった男色沙汰の見立てはありませんので、ねんのため。


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