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活写法 かっしゃほう hypotyposis
——『とらわれの身の上』3巻56〜57ページ(樋野まつり/白泉社 花とゆめCOMICS)
嘉(父) 実は…この話は
昂上家の方々には
伝えられなかった
昔話なのですが……」
——室町時代——
 ——旧昂上邸——
花園 ドカドカ)
家臣 花園様
どうか——
どうか
これより先は
お許し下さいませ」
——以下56ページから95ページまで続く——
——『とらわれの身の上』3巻56〜57ページ
(樋野まつり/白泉社 花とゆめCOMICS)


定義重要度

活写法は、過去(もしくは未来)のことを、目の前で起こっているようにみせるレトリックです。つまり、過ぎ去ったことや将来に起こると思われることを、現在目の前で起こっていることのように表現するものです。


効果

効果1臨場感を高めることで、作品に向き合ったり、印象つけることができる

臨場感を高めることで、より作品に向き合かいあったり、印象を強くもたせることができます。
:臨場感、臨む、対する、直面、印象、焼きつける
効果2目の前で起こっていることを、生き生きと描く

目の前で行われているものごとを、目の前に起こってるのだと思わせるようなタッチでえがきます。このことで、そのシーンをより生き生きとしたものにすることができます。
:目の前、前、前部、前方、前面、まん前、目先、寸前、直前、目前、眼前、至近、生き生き、ありあり、はっきり、くっきり、際やか、定か、鮮やか、鮮明、明白、明瞭

使い方
使い方1文章での使いかた——過去のものを現在形であらわす

文章では、過去(または未来・架空)の出来事であるにもかかわらず、現在形を使うことによって表現することになります。つまり、「た」「だった」「でした」のような過去のことをあらわす助動詞であるとか、「だろう」「でしょう」のような未来の推量をあらわす助動詞であるとかを使いません。かわりに、現在をしめすことばで書かれることになります。



例文を見る例文を見る(末尾)

引用は『とらわれの身の上』3巻から。

黒石家の人々は、先祖代々、昂上(こうがみ)家に仕えてきた。これは、昴上家の護り神である竜神の呪いのためのもの。どうして黒石家の人が呪われるようになったかを説明しているのが引用のシーン。
——室町時代——
 ——旧昂上邸——
と書かれている通り、このページから95ページまでは、室町時代でのことです。室町時代にさかのぼって、黒石家の人が竜神に呪われるようになってしまった理由が描かれています。

室町時代のことだから当然、過去のことです。それにもかかわらず、眼前で起こっているかのように会話したりしています。「黒石家の人が竜神に呪われるようになってしまった経緯」が、「迫真法」を使って描かれています。



レトリックを深く知る

深く知る1「活写法」の条件
『レトリック辞典』では、「迫真法」に見られる条件について、次の3つを挙げています。
  1. 現在形の使用(いわゆる「歴史的現在」「物語の現在」)
  2. 対話形式の採用
  3. 人物・状況の絵画的描写
ただし、必ずしもこれを満たさなければならない、と同書に書かれています。

深く知る2実際に「活写法」が使われるばあい

実際に「活写法」が使われるばあい。それは圧倒的に、過去のことを現在であるかのように表現するタイプです。つまり、「歴史的現在」とか「史的現在」とか呼ばれるものが大多数です。過去のできごとについて現在形を使うのが、「活写法」の基本的なタイプです。

深く知る3コミックスで「活写法」が使われるばあい

コミックスのばあい、過去の出来事を過去形で表現されることは、めったにありません。過去のことであっても「過去形」を使ったりはしないのです。

あたかも現在の出来事であるように、登場人物が会話したりするのがふつうです。ただ、過去であることを読者に理解してもらうため、スクリーントーンを使ったりして、現在の出来事と区別します。ですがもともと、過去のことを過去形で話しているという前提じたいがないのです。

ですので、コミックスのばあいには「活写法」というものは考えにくいです。言いかえると、コミックの世界では、「活写法」であることのほうが自然なのです。そのため、あえて「活写法」と名前をつけてレトリックの1つにする必要もないかと思います。

ですが一応、レトリックが小説などの「文学」を対象にしていたため、「迫真法」という用語があります。用語があるから使ってみよう、といった気分でこのページを作りました。




レトリックの呼び方

呼び方 活写法・活写
呼び方 現写法、現在法
呼び方 迫真法、歴史的現在、史的現在
呼び方 現前化


関連レトリック

歴史的現在、時空転移、模写、ものまね、人物現出、対話形、対話、故人現出

参考資料

●『センスをみがく文章上達事典』(中村明/東京堂出版)

『山月記』などを例文出しながら、「現写法(=活写法)」について解説を加えています。同じ者の『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)よりも、くわしく書かれています。
●『文章読本 改版(中公文庫 た30−28)』(谷崎潤一郎/中央公論社)

この本に出てくる「現在止め」というのが、ほぼ「活写法」と同じものです。[三 文章の要素]あたりに書かれています。


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