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名(下の名前) な(したのなまえ) given name
――『とある魔術の禁書目録(インデックス)』1巻100〜101ページ([原作]鎌池和馬・[作画]近木野中哉/スクウェア・エニックス ガンガンコミックス)
当麻 てっ
めぇ…ッッ」
何様だ!!!!」
ステイル ステイル゠マグヌス
と名乗りたい所だけど
ここは
〝Fortis931〟
言っておこうかな」
僕達魔術師は
魔法を使う時に
真名を名乗っては
いけないという因習が
あってね」
――」
 かな?」
――『とある魔術の禁書目録(インデックス)』
1巻100〜101ページ
([原作]鎌池和馬・[作画]近木野中哉
/スクウェア・エニックス ガンガンコミックス)


定義重要度

名(下の名前)は、代々続いている苗字ではなく、その人に特別に与えられた呼び名のことをいいます。「実名」のようにオフィシャルで正式なものや、「仮名」のようにプライベートで内輪だけのものがあります。


効果

効果1あだ名などを使って呼ぶことで、親しさをあらわす

たとえば、「あだ名」や「愛称」で呼ぶときには、親密な関係を読みとることができます。ある人を、その「名(下の名前)」で呼ぶ、その様子を見れば、それだけで親しい関係だということが分かります。
:親しい、近しい、気安い、遠慮ない、気が置けない、なかよし、親愛、親密、懇意、幼なじみ、和気あいあい
効果2高い地位にあることを表す呼びかたをすること、敬意をしめす

人の呼びかたには、身分をあらわすものがあります。「大佐」とか「先生」とか、といったものです。人をこの高い身分であることを示すような呼びかたをする。そのような呼びかたをしたばあいには、呼ばれる側に対する敬意があるといえます。
:敬意、尊ぶ、敬う、仰ぐ、あがめる、立てる、敬する、尊敬、慕う、私淑、心酔、傾倒

使い方
使い方1フィクションのばあい、その人の特徴をピックアップすることができる

ある人の特徴を強調して表現したい。そのとき、ふつうの現実の世界では、「あだ名」「愛称」などを使うばあいに限られます。ですがフィクションの世界では、本名(実名)であっても特徴をあらわすことができます。言いかえれば、そのキャラクターの「名は体を表す」ような名にすることができるのです。なぜなら登場人物の本名(実名)の設定自体を、話し手=書き手が作りだすのだから。

たとえば、親しさを描きだすときには、設定としてお互いが親しくなるような名をつける。敬意を表現したいときには、上下の関係にあるような名をつける。そういったことです。
:特徴、特色、色彩、異色、異彩、特殊、スペシャル、格別、格段、別段、独特、ユニーク、特有、固有、オリジナル、選ぶ、選る、えり抜く、えり抜き、選る、選りすぐる、取り立てる、取り上げる、ピックアップ、取りいれる

注意

注意1失礼になることがあり、時と場所を考える必要がある

たとえば「あだ名」をとってみても、時と場所を考える必要があります。あらたまった場面では、ふつう「あだ名」では呼びません。また、いつもウラで悪口を言うときに使う「あだ名」を、その悪口の対象となっている人の目の前では使いません。



例文を見る例文を見る(末尾)

引用は、『とある魔術の禁書目録(インデックス)』1巻からです。

主人公は、上条当麻。夏休みの初めの日、というシーン。マンションのベランダを見ると、シスターの少女が「干されていた」。話を聞くと、その女の子は「インデックス」という名前だという。そしてインデックスは、当麻の家に居候をはじめた。

次の日、補習のために学校に行き、そしてマンションに帰ってくる。するとインデックスは、刺されて血みどろになって倒れていた。

そこに、男(ステイル)があらわれる。彼は、インデックスを「保護」に来たという。けれども当麻は、「保護」という言葉を信じなかった。なにせ、「保護」のために来たといいながら、血みどろで死にかけにした上で連れ去ろうとしているのだから。

怒った当麻は、男に殴りかかる。それが、引用のシーンです。ここでは、男(ステイル)の名前が、3とおり書かれています。
真名(実名) ステイル゠マグヌス
魔法名 〝Fortis931〟
あだな 殺し名
真名(実名)は、「ステイル゠マグヌス」です。しかし、この呼びかたは本人が「真名」だと言っています。魔術師が魔法を使うときに名乗ってはいけないのだと言います。この「真名」については、下にある、
深く知る1「真名」
の項目に書いてあります。

つぎにステイルは、「〝Fortis931〟」について。次のように説明しています。つまり、
「魔法を使う時に真名を名乗ってはいけないという因習がある」
ために、真名を名乗らない時に使う呼びかたとされています。したがって、下に書いた説明のうち、
深く知る2「仮名」
に当たります。

さいごにステイルは、自分自身のことを、
魔法名―― 殺し名かな?」
と自嘲しています。ていねいに書きなおすと、
自分の「魔法名」は、「〝Fortis931〟」だろうか。いや、むしろ「殺し名」と言うほうが正しいのではないだろうか
という、その場でつくった呼びかたです。そして、この「殺し名」という呼びかたは、みずからの特徴をよくとらえた「あだ名」だということができます。したがって、
深く知る2「あだ名」「愛称」
に該当します。



レトリックを深く知る

深く知る0名(下の名前)の分類

名(下の名前)は、おおまかにいって2つに分けることができます。その2つというのは、「実名(=本名など)」と、「仮名(=異名・二つ名など)」です。

そこで、この「実名」と「仮名」について、それぞれくわしく見ていくことにします。

深く知る1「実名」のグループ

「実名」は、「じつみょう」と読みます。「じつめい」という呼びかたをすることもあります。ですが「じつみょう」のほうが一般的です。

この「実名」グループに該当するのは、以下のものです。

「実名」
「実名」は、その人の本来の呼び名です。そして、「本名」というのと近い関係にある読みかたです。

ですが「実名」と「本名」とでは、大きく違うところがあります。それは、「実名」には神秘的・呪術的な意味が込められているということです。そのため、相手と面と向かった状態で「実名」で呼ぶことは、まずありません。なお書面のばあいは、「実名」が書かれることも多くあります。
「実名」では呼ばない。では、いったい人をどうやって呼ぶのか。それが、あとであつかっている深く知る2「仮名」のグループです。

「真名」
この「真名(まな)」については、だいたいは「実名」と同じものと考えることができます。ただし、上に書いた「実名」以上に、神秘的・呪術的な要素が強いといえます。

なお、「仮名(かな)」にたいする「真名(まな)」、つまり漢字の意味に使ったりすることもあります。たとえば「古今和歌集」の「真名序」は、「まなじょ」と読みます。この「真名」は、漢字のことを意味しています。この意味での「実名」は、このサイトでは扱っていません。

深く知る2「仮名」のグループ

「仮名」は、「けみょう」と読みます。「かめい」または「かな」と読むこともあります。しかし、一番メジャーなのは、「けみょう」という読みかたです。

それではなぜ、深く知る1「実名」のグループで呼ぶことをしないのか。「実名」の代わりに深く知る2「仮名」のグループを使うのか。その理由としては、おおまかに言って2つのパターンがあります。

1つ目は、「実名」で呼ぶことを避ける場合です。「実名」、つまり本来の名(本名)で呼ばれることは、神秘的・霊的なわざわいをもたらす。そのように考えられていました。日本以外であっても、このように「実名」を使って呼ぶことを避ける。そういった風習があるのが普通です。

2つ目は、特定の立場にあることを示すものです。たとえば、「法名」という「仮名」を持っている人。この人は、出家した人なんだということが分かります。「ペンネーム」といえば、なにか文筆業に関連するということに気がつくことができます。

この「仮名」に含まれるものとしては、次のようなものがあります。

「仮名」
この「仮名」は見てのとおり、「仮につけた名」のことです。

このとき「仮名」は、「けみょう」と読むのが一般的です。その理由は、
  • 「実名」(じつみょう)と「仮名」はセットのものなので、「名」は「みょう」と読むほうが支障がない。

  • 「仮名」は「かめい」と読むこともある。しかし、対になる「実名」を「じつめい」と読むと、「少年の実名報道」のようなばあいの「実名=じつめい」と混同することがある。

  • 「仮名」を「かな」と読むと、「平仮名」「片仮名」のいみで使う「かな」と誤解されやすい。
といったことが言えるからです。

「異名」
この「異名」は、本来以外の呼びかたの全般をさします。したがって「仮名」という単語と、ほとんど同じことをあわらします。

なお、この「異名」は「いみょう」と読むのが一般的です。

「二つ名」
つぎに「二つ名」。これは、「異名」に近い意味だということができます。「本名とは別の、2つ目の名前」ということだからです。

それはそうとして「二つ名」には、もう1つのニュアンスを帯びることがあります。それは、「そこはかとなく格好いい呼びかた」というニュアンスです。これは特に、アニメや漫画や小説でよく見かけます。

そして、アニメや漫画や小説でよく見かける「二つ名」。その多くは、「そこはかとなく『中二病』を感じさせる」ものです。

『中二病』がどのようなものかを、ひとことで説明。それは、難しいものです。例えば、インターネット上で急に、「そこはかとなく」とかいう単語を連発したりすることが、『中二病』に当てはまるのではないかと思います。まあ、このサイトが全体として『中二病』のような感じもするけれど。

「通称」
この「通称」というのは、歴史上では「官職名」をつかって人を呼ぶことをさしました。「徳川家康」であれば、「征夷大将軍」がこれに当たります。

現代では通称は「あだ名」と、ほとんど同じ意味で使われます。しいて言えば、「中曽根康弘」を「大勲位」と呼ぶのを「通称」といえなくもなけれど、ニュアンスは違います。

ですので少なくとも現代では、「通称」というのは「あだ名」の意味に使って問題ないと考えられます。

「別名」「別称」
この「別名」や「別称」は、「仮名」と同じと考えることができます。「実名」とは「別につけた名」ということだからです。

ただし「別名」を「べつみょう」と読むと、ちがうものを指し示すことがあります。それは、「別符」という意味です。「別名=別符」は、平安~鎌倉時代の土地制度の仕組みのことです。蛇足ですが大分県の別府は、この「別符」から名づけられたものです。

「字」
ここでの「字」は、「あざな」と読みます。「じ」ではりません。

これは、中国で多く使われたものです。「実名」以外に名づけられた、呼びかたのことです。たとえば
「諸葛孔明」であれば、諸葛(苗字) 亮(諱) 孔明(字)
となります。そして、「諱」となる「亮」は使うのが避けられます。そのため、「孔明」と呼ばれることになります。

日本で「字」をもっている人は、現代ではほとんどいないといって差しつかえないといっていいでしょう。歴史上では、学者などがつけることがありました。

「法名(僧侶名)」「俗名」
この「法名」(または「僧侶名」)というのは、出家したあとの名前をさします。この「法名」がどんなものなのかを戦国時代から例をあげれば、つぎのようになります。
  • 武田信玄の「信玄」は「法名」で、晴信が「俗名」

  • 上杉謙信の「謙信」は「法名」で、政虎・輝虎が「俗名」
またそれほど例が多いわけではありませんが、「還俗」というものもあります。一度、仏門に入った人が「俗名」にもどることをいいます。出家の逆です。なかには、
  • 足利義昭(15代将軍)
     覚慶(法名)→足利義秋→足利義昭→昌山(法名)
この人にように、出家していた人が還俗し、さらに出家する。そういったこともあります。

「あだ名」「愛称」
「あだ名」や「愛称」。たいていの場合、他人によってつけられたものをいいます。その人の特徴を、もとにして作るのが、一般的です。「ニックネーム」というのが、これにちかいと思います。くわしくは、「あだ名・命名」と「愛称語」を、ごらんください。

「ペンネーム(筆名)」「雅号」「芸名」「襲名」
「ペンネーム(筆名)」は、ペン(筆)を使って(さいきんはパソコンを使って)書く人が使うものです。マンガの作者は、たいていこの「ペンネーム」を使います。

「雅号」は、学者や画家などが用います。マンガの作者は、ふつう「雅号」は使いません。たぶん「雅」ではないと考えられているのでしょう。

「芸名」は芸能人をはじめとする、芸事をする人につけるものをいいます。たとえば「中村勘三郎」は、歌舞伎での芸名です。本名は、別にあります。多くの芸能人は、この「芸名」をはじめとする「仮名」を使っています。

その他
細かいものをあげて説明すると、きりがありません、ですので、あとは「仮名」の例をあげておくことにします。
  • 四股名・醜名(しこな)

  • 源氏名

  • 俳号

  • 屋号

  • アバター名

  • ハンドルネーム

  • コードネーム

  • ラジオネーム
こういったものも、「仮名」ということができます。

深く知る2「実名」と「仮名」が混在するグループ

この〝「実名」と「仮名」が混在するグループ〟としてあつかうのは、「諱(いみな)」という呼びかたです。「諱」は「忌み名・忌名」と書かれることもあります。もともとは、中国にあった習わしです。(日本にも昔からあった、という説もあります)
これは、はじめは深く知る2「仮名」のグループだったものが、時代の流れとともに深く知る1「実名」のグループに変わったというものです。そのため「諱」については「実名」と「仮名」とが「混在する」グループということになるのです。

これから、くわしく見ていくことにします。

「仮名」のグループにふくまれる「諱」
「仮名」に属する意味での「諱」については、下のの2とおりの意味で使われます。


死者の実名を避けて、代わりにつける「諱」
1つ目は、本来の「諱」です。これは、死んでしまった人の「実名」を呼ぶのを避けるため、死んだ人にあとから名づけるものです。死んだ後に、生前に使っていた「実名」で呼ぶことは避けられました。霊的・呪術的な意味で、死者の人の「実名」を呼ぶことが、ひかえられたためです。

このようにして、生前使っていた「実名」を避ける。その代わりにつけられた呼びかたが、「諱(忌み名)」とされました。


生者の実名を避けて、代わりにつける「諱」
2つ目は、生きている人が使っている人に関するものです。生きている人の「実名」を避けるため、その「実名」とは別の「諱」をつけるものです。の範囲が、死んだあとだけではなく生きている人に対しても適用されることになったわけです。


このが加わったことによって、「諱」の意味に変化が生まれました。それは、「亡くなった人」「生きている人」のどちらについても、「実名」を避けて「諱」つけることになったということです。

「実名」のグループにふくまれる「諱」
「実名」のグループにふくまれる、「諱」。これに当てはまるのは、これから書くです。このの意味での「諱」は、時代的によりも下ったものです。

身分の高い人の名前のうち、1文字を使って作る「諱」
さらに3つ目として、日本では「諱」が独特の意味をもちました。それは、「実名」の一部に「諱」を組み込んだということです。

どういうことか。たとえ武士のばあい、元服の時に「実名」をつけます。そのときに、「実名」の中に「諱」と呼ばれるものを一文字含めておきます。これもまた「諱」だということです。

このは、さらに2つのタイプに分かれます。

タイプその1は、「諱」が親から子へ受け継がれるという風習です。親の諱のうち一文字を、子に与えるとうことです。たとえば徳川将軍家を見ると、
康―秀忠―光―綱―綱吉―宣(綱豊)―継―吉宗―重―治―斉―慶―定―茂(慶福)―慶喜
と、原則的に「家」の字を引き継いでいることがわかります。

タイプその2は、貴人から「諱」のうち一字を受けるというものです。「諱」をあたえるのは、主君・身分の高い人。「諱」を与えられるのは、家臣・身分の低い人。このようにして行われるのが、「タイプ2」です。

たとえば、武田信玄は、出家する前は「信晴」と名のっていた。この「晴信」のうち「晴」は、足利将軍家の12代将軍「義晴」の「晴」を拝領したもの。

  • 上杉謙信は、出家する前は(政虎または)輝虎だった。この「輝虎」のうち「輝」は、足利将軍家の13代将軍「義輝」の「輝」をいただいたもの。
こういった風習は、とくに武家時代に多く見ることができます。




レトリックの呼び方

呼び方
※このページであつかっている「given name」。これを言いあらわすときにピッタリしする日本語は、残念ながら見あたりません。そういうこともあって、このサイトでは「名(下の名前)」という書きかたを押しとおしました。


関連レトリック

あだ名・命名愛称語、指小辞、隠喩換称提喩

参考資料

●『名前のはなし(東書選書 67)』(高梨公之/東京書籍)

「名(下の名前)」について書かれている本としては、一番くわしいと思います。「苗字」と「名(下の名前)」の両方について書かれている本は、いくつかありました。ですが、「名(下の名前)」にいてだけ書かれていた本は、私(サイト作成者)が読んだ範囲内では、こちらだけでした。
●『名前の禁忌習俗(講談社学術文庫 847)』(豊田国夫/講談社)

「諱」について、本1冊を使って解説してあります。『忌み名の研究(講談社学術文庫 1017)』(穂積陳重[著]・穂積重行[校訂]/講談社)とともに、「諱」についてくわしい言及があります。
●『名前の研究』(星田晋五[著]・星田言[編]/近代文芸社)

この本は上の2冊に比べると、やや難しいことが書かれています。ですが、特に前半部分は、「名(下の名前)」についてくわしい説明がされています。


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