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方言 ほうげん dialect
——短編「リンク〜きみのてのひら〜」『恋を奏でる季節』151ページ所収(やぶうち優/小学館 ちゅちゅコミックス)
美由宇 ね その子
かわいかった?」
北斗 ああ
なまらかわいかったさぁ」
美由宇 なまら…?
え?何それ?方言?」
なになに?
それってどーゆー意味?」
北斗 「すげー」とか
「超」とかに近いかな?」
美由宇 へ〜」
北斗 「なまら〜〜だべや〜」
みたいに使う」
美由宇 「だべや」?」
北斗 「〜だ」「〜です」みたいに
文末に付けるやつ」
——短編「リンク〜きみのてのひら〜」
『恋を奏でる季節』151ページ所収
(やぶうち優/小学館 ちゅちゅコミックス)


定義重要度

方言は、ある一定の集団でだけ通じるような言葉づかいをいいます。ただ単に「方言」といったばあいには、ふつう、ある地域に住む人々のあいだだけ話されているような言いまわし(=地域方言)をさします。


効果

効果1生まれた土地のことばであることから、安らぎをあらわす

方言の魅力は、いろいろあります。ですが、その中でも一番さいしょにあがるものが、この「安らぎ」です。生まれ育った土地で使われることばからは、安心感を得ることができます。
石川啄木も言っています。「ふるさとの訛なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」と。
:安らぎ、安心感、ほっとする、郷里、故郷、生まれ故郷、郷土、田舎、生まれ育った
効果2生まれた土地の、地域の文化を表す

生まれ育った土地のことばである「方言」は、その地域の文化と密接に結びついています。言いかえれば方言は、使われている地域の文化であるともいえます。
:文化

使い方
使い方1登場人物として、ある地域の方言を話す人物を設定する

「方言」を使う、いちばん簡単な方法。それは、方言をしゃべる登場人物を作品に出すということです。
:登場人物、キャラクター
使い方2タイトルとして使うなど、他の方法もある

方言をしゃべる登場人物を登場させる以外にも、「方言」を使う方法があります。たとえば、
  • 漫画のタイトルとして『じゃりン子チエ』(大阪弁、「じゃりン子」は「おてんばな子」というような意味)

  • 飲みもの名前として、『いいちこ』(大分弁で「よい」)

  • テレビ局の名前として、『岩手めんこいテレビ』(「めんこい」は「かわいい」という意味)
などなど。ほかにもいろいろ使いかたがあります。
:タイトル、食べ物の名前、駅弁の名前、お菓子の名前、飲み物の名前、日本酒の名前、焼酎の名前、キャッチフレーズ、スローガン、モットー、標語、標識、看板、ポスター、歌

注意

注意1標準語と比較して、卑下してしまう

とくに、ひとむかし前までは、方言は不完全なものとされていました。そのため方言は、とくに公の場面から排除されていました。
このことから方言を使うことは、「はずかしいことだ」という意識がもたれていることがありました。
:卑下、はずかしい、きはずかしい、決まり悪い、照れくさい、肩身が狭い、後ろめたい、引け目、不完全、不正



例文を見るその1例文を見る(末尾)

このページの、いちばんはじめの画像は、
短編「リンク〜きみのてのひら〜」から(『恋を奏でる季節』151ページ所収)。

主人公は美由宇(みゆう)。高校2年生。
美由宇の部屋にある〈鏡〉。この〈鏡〉を、美由宇のぞき込んでいると・・・。
〈鏡〉のその向こう側に突然、少年が映り込んだのだった。

もちろん美由宇は、ひどく混乱する。
けれども、そんな混乱のあとで〈鏡〉の向こうの男の子に声を掛けてみると。なんと、返事が返ってきた。
その少年は、美由宇を同じ高校2年生。北海道に住んでいる、北斗という名前だとのこと。

そして、そのように〈鏡〉を通じて話をしていくにつれて。だんたんと、うち解けていくのだった。

そんな時の会話が、引用のシーンになります。

北海道についての話をしているうちに、
北斗はつい、北海道弁を話してしまう。そんな北海道弁を聞いて美由宇は、はじめは笑ってしまう。だけれども、だんだんと方言に興味を持ちだすようになる。そういうシーンです。



例文を見るその2例文を見る(末尾)

——『カードキャプターさくら』1巻29ページ
(CLAMP/講談社 KCデラックス)
ケロちゃん こにゃにゃちは——」
さくら ほえ——!!」
ケロちゃん や—— あんさん
よー わいを
目覚めさせてくわたわ——
あんがとさん!」
さくら お 大阪弁…(汗)」
ケロちゃん いや——
なっがいこと この本
大阪にあったさかい
すっかり 大阪弁が
うつってしもた」
——『カードキャプターさくら』1巻29ページ
(CLAMP/講談社 KCデラックス)
例文は『カードキャプターさくら』1巻。

(回想のなかでの)ケロちゃんの登場シーンです。本を守っている獣「ケルベロス」こと「ケロちゃん」が登場します。

登場するのはいいのですが、なぜだかわかりませんが、「ケロちゃん」は大阪弁です。大阪弁の使い手です。
いや——
なっがいこと この本 大阪にあったさかい
すっかり 大阪弁が うつってしもた
と、いちおう「ケロちゃん」は言っています。けれども、「ケロちゃん」が大阪弁を使うことは、ストーリーの流れはあんまり関係ありません。

たこ焼きが「ケロちゃん」の好物であることも、ストーリーとは関係なさそうです。関係なさそうなのですが、ともかく「大阪弁」を使います。いうまでもなく、この点が「方言」にあたります。



レトリックを深く知る

深く知る1「共通語」にあてはまらない「方言」
このページで扱っている「方言」について、つけくわえておくことが1つあります。
それは、「○○弁」と呼ばれる「方言」には、ピッタリ共通語に当てはまらない言葉が多くあるということです。

たとえば、ケロちゃんの使う関西弁の中で、「おおきに」という言葉があります。これを標準語にするのは、簡単なことではありません。
一見すると、関西弁の「おおきに」は、「ありがとう」という共通語に当てはまる気がします。そして、「おおきに」という関西弁は、「ありがとう」という共通語の意味と似ているのは確かです。

しかしながら、この2つが「ピッタリと」同じのことだけを表現しているのではありません。

「ありがとう」は、感謝をあらわすきまり文句として形式化しています。しかしこれに対して、「おおきに」のほうは、あいさつことばのレベルから、相手の好意に感激し、ときにはそれを「すまない」と思う気持ちまでこめて、幅広く使われていると思われるのです。

このようなことから、「ありがとう」イコール「おおきに」ではないということが言えます。

以上の関西弁と標準語の比較については、『日本語のレトリック(講座 日本語の表現5)』(中村明[編]/筑摩書房)の中にある、佐藤亮一氏の執筆部分を参考にしました。

深く知る2方言の分布の代表的な例

深く知るa「方言周圏論」について
方言については、「方言周圏論」(または方言周圏説)というものが成りたつことが、よく知られています。

この「方言周圏論」というものを短く説明すると、

古いコトバが、中央から遠く離れた地域に方言として残存するという現象
のことをいいます。ここでいう「中央」というのは、たいていは京都のことです。ただし江戸中期(元禄・化政)以後の場合は、江戸(東京)を中心として考えることもあります。

たとえば「かたつむり」を表す語形の全国分布状況を見てみることにします。すると、次のようになっています。
  • 東北北部と九州西部に「ナメクジ」系が分布

  • 東北南部と九州の一部に「ツブリ」系が分布

  • 関東や紀伊半島南部、四国南部などに「カタツムリ」系が分布

  • 中部や中国に「マイマイ」系が分布

  • そして近畿を中心に「デデムシ」系が分布
しています。京都に一番近い近畿地方には、「デデムシ」系が分布している。そして、それから少し離れた中部や中国では「マイマイ」系使われている。といった感じで、中央から近い順に、
デデムシ系→マイマイ系→カタツムリ系→ツブリ系→ナメクジ系
と分布しています。

ここで、カタツムリのことを「ナメクジ」と呼ぶのは、中央では最も古い呼びかたです。そして、次に古いのが「ツブリ」系で、その次が「カタツムリ」です。

このように、古いものがかつての中央から遠く離れた地域に残ること。そして、より新しいものが周辺のより近がっているという現象。
このことを「方言周圏論」(方言周圏説)といいます。

イメージとしては、
水たまりのまん中に落とした石から同心円状の波が立つことで伝わっていくのと同じように、中央にあった古いものが、時間が経つにしたがって伝わっていくものだといえます。

深く知るb「東西分布」
方言によく見られる現象として、もうひとつ、「東西分布」というのがあります。

この「東西分布」というのは、
日本の東日本と西日本とで、それぞれ別のコトバを使うという現象のことです。

たとえば「塩辛い」ことをいいたいとき。
東日本では「カラい」といい、西日本では「ショッパい」というのが一般的です。

なお、
この「東西分布」で東西に分けられる、分岐点は。それは、糸魚川のあたりとされています。

深く知る3「方言」と「俚語」との違い

ひとによっては、「方言」とは別に「俚語」という用語を使うばあいもあります。

このばあいには、
その地方に使われている(標準語と異なった)特殊な単語や、言いまわしだけ
をさして、「俚言」と呼ぶことになります。




レトリックの呼び方

呼び方 方言
呼び方 地域方言・訛り


別の意味で使われるとき

地域方言と社会方言

方言学では、「方言」を「地域方言」と「社会方言」とに分けることがあります。このばあいには、
  • 地域方言(local dialect)
     →上に書いたような、同じ国語の中で「地域」における差があること

  • 社会方言(social dialect)
     →同じ地域での言葉づかいに、年齢や職業などによる「社会」における差があること
という分類をすることになります。

ですが、
このページのさいしょでふれたように、断りなく「方言」と書いてあった場合には、場所ごとの方言を指すのが一般的です。いいかえれば、「地域方言」のことを指しているということになります。



関連レトリック

隠語、訛り、社会方言、破格構文、文体落差、くびき語法、破格くびき、兼用法、異質連立、交差再説、二詞一意古語法

参考資料

●『生きている日本の方言』(佐藤亮一/新日本出版社)

やさしい文で書かれていて、「方言学」の入門としては最適です。
また。 例えば値段をたずねるときに、「イクラ」と言う地方なのか、それとも「ナンボ」と言う地域なのか。このように、個別の言葉に関して、どの地方でどんな言葉づかいをしているか。つまり、方言の分布が書かれているものとしては、 『お国ことばを知る方言の地図帳』(小学館辞典編集部{編}・佐藤亮一[監修]/小学館) が膨大な例(192件)を挙げています。場合によっては、こちらも参考になると思います。
●『日本語ウォッチング(岩波新書新赤版 540)』(井上史雄/岩波書店)

こちらも方言について書かれたもので、基本的な内容になっています。岩波新書なので手に入れやすいのもポイントです。
●『ヴァーチャル日本語 役割語の謎〈もっと知りたい!日本語〉』(金水敏/岩波書店)

漫画をはじめ、小説などに登場する架空の登場人物。彼らは、かならずしも日本のどこかで実際に話されている方言を、そのまま話す必要はない。言いかえれば、いくつもの方言が交ざったようなことばを話していてもかまわない(ニセ方言でよい)。そんなことが書いてある本です。
●『文章読本 改版(中公文庫 み−9−7)』(三島由紀夫/中央公論社)

小説の中における、方言の役割。そういったことに触れているものとして、参考になると思います。



余談

余談1「〜じゃん」は「方言」?

『日本語ウォッチング(岩波新書新赤版 540)』(井上史雄/岩波書店)によると、この「〜じゃん」という方言は、「もともと静岡県の付近にあった方言」で、現在は都内の若者に広がっていることばだそうです。その、都内に広がっていることばというのは、「〜じゃん」というもので、例えば「それでいいじゃん」とか、「そこにあるじゃん」とかいう使い方をするものです。

なんと、マンガ『ちびまるこちゃん』に出てくる「おばあちゃん」が、この「〜じゃん」というのを使っているのです。この『ちびまるこちゃん』の舞台は静岡県の清水なので、「もともと静岡県の付近にあった方言」であることの裏付けとなるでしょう。なにせ、子供たちではなく「おばあちゃん」の口から、「〜じゃん」という言葉が出てくるのだから。

実のところ私(サイト運営者)は、こんなサイトを作っていながら、『ちびまるこちゃん』を読んだことがないのです。だから、具体的に何巻の何ページで使われいるということは、指摘することができません。すみません。

誰か親切な方がいたら、[メール]で、「おばあちゃん」が「〜じゃん」と言っているシーンがどこにあるか、教えて下さい。


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