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引用法 いんようほう citation
——『小人たちが騒ぐので』21ページ(川原泉/白泉社 JETS COMICS)
解説 ある人がエルサレムから
イスラエルに行く途中
強盗に襲われて
ボロボロになった
道行く人々は
かかわり合いに なるのを避けて
見て見ぬふりをしたが
旅のサマリア人 だけは彼を見て
気の毒に思い
傷の手当てをして
自分の家畜に乗せ
宿屋について行き 介抱した
翌日 お金を
宿屋の主人に手渡し
『この人を見てやって下さい
費用が余計にかかったら
帰りがけに私が支払います』
と言った」
ルカによる福音書より
善きサマリア人の喩え
『汝の隣人を愛せよ』
友人M そんで 原稿の方は?
仕事 はかどってる?」
↑決して悪意はない
カワハラ プツッ)
↑心の中でなにかが切れた音
我はαでありΩである
最初の者であり
最後の者である
初めであり 終わりである
我はダビデの若枝
また子孫であり 輝く
明けの明星である
きたりませ きたりませ
——然り 我はすぐに来る

ムニャムニャ」
友人M 神様のフリして
ごまかそーとしてるね」
解説 ヨハネの黙示録より
『ああ
わざわいだ わざわいだ
地に住む人々は
わざわいだ』
——『小人たちが騒ぐので』21ページ
(川原泉/白泉社 JETS COMICS)


定義重要度

引用法は、他の文章や作品から言葉を借りてきて、自分の作品に使うというレトリックです。言いかえれば、誰かが使った言葉を、自分の言葉の中に引いてきて使うものです。


効果

効果1説明に用いたりすることで、自分の考えをわかりやすく伝える

説明を深い部分まで知ってもらいたいとか、自分の話に説得力をもたせたりするために、使われます。
:考え、例示、示す、説明、説く、解説、能率、効率
効果2自分の考えを相手に強く伝える

よく知られたことばを「引用」することで、強い説得力を増す。また、能率よく伝えて分かってもらう
:伝わる、伝える、伝播、伝達、コミュニケーション、説得、説明、説く
効果3権威に付きしたがうことで、自分のことばの妥当性を主張する

権威に付きしたがうことで、自分が話している(書いている)ことに、より強い説得力を持たせることができます。
:権威、重み、威厳、いかめしい、重々しい、妥当、適切、適正
効果4引用文をつけることで、より品位や奥行きを与えることができる

引用文では、本人ではない第三者の考え差し込むまれます。そのため、本人の考えかたと第三者の考えかたとが、いっしょに示されることになります。そうすると、本人と第三者との考えかたが混ざりあうことになります。ですので、話に奥行きを与え広がりを与えることができるのです。
:品位、品、上品、優雅、エレガント、ゆかしい、奥ゆかしい、奥ゆき、厚み、厚さ、味わい、趣き、情趣、趣味、趣向、風情

使い方
使い方1引用文は改変しないのがふつうなので、気を遣わずに手軽に使える

以前にだれかが書いた(話した)文をそのまま、自分の文にとりいれる。それも、引用文に手を加えないことがマナーなので、引用元の文をいじってはイケナイ。こうなると「引用法」は手軽に使える、カンタンなレトリックだといえます。
:引用文、引く、利用、活用、転用、便乗、援用
使い方2核となっている部分を的確に選び、なるだけ短い文で引用する

核となっている部分を引用することが大切です。また、長さのある文を何度も引用すると、もはや自分の文章ではなくなってしまいます。
:核、核心、中心、焦点、ピント、中核、中枢

注意

注意1文章が重くなったり、衒学的になったりする

使いすぎると文章が重くなったり、衒学的になったりすることがあります。これは、引用元(引用される側)に書かれている文が難しければ難しいほど、引き起こされやすいものです。
:重い、重たい、堅苦しい、気重、重たい、衒学、てらう、見識ばる、かしごだて、さかしら
注意1勝手に、引用文に手を加えてしまうことがありうる

勝手に、引用文に手を加えてしまう。これは、れっきとした犯罪(同一性保持権の侵害:著作権法違反)です。なので、引用文を改ざんするのは禁止されています。
:手を加える、加工、つくりだす、こしらえる、作りかえる、再製、改ざん
注意3「引用」は「盗用」と隣りあわせ

「引用」は「盗用」や「盗作」「剽窃」と隣りあわせです。このサイトが、他人の描いたマンガを(許可無く)使っているのは「引用」です。けれども、マンガの作者の名前を書いておかないと「盗用」になります。こういった議論が好きなかたは、このサイトにある[「著作権」のページ]をご覧ください。
:盗用、盗作、剽窃



例文を見る例文を見る(末尾)

引用は『小人たちが騒ぐので』より。

この本のこのあたりは、「引用法」に分類される「明示引用」や「暗示引用」が、たくさん出てきます。

まず、「明示引用」から。
ルカによる福音書より
善きサマリア人の喩え
『汝の隣人を愛せよ』
見てのとおり、「ルカによる福音書」から引用した言葉であるということが、しっかり書かれています。なので、これは「明示引用」になります(厳密に書くと、「ルカによる福音書」第10章25節〜37節)。

つぎ。
ヨハネの黙示録より
『ああ わざわいだ わざわいだ
地に住む人々はわざわいだ』
これも、「ヨハネの黙示録」から引用した言葉であるということが、しっかり書かれています。なので、これも「明示引用」になります(これも厳密に書くと、「ヨハネの黙示録」8章13節)。

以上が、「明示引用」の例になります。次に、「暗示引用」のほうを見てみましょう。
我はαでありΩである
最初の者であり
最後の者である
初めであり 終わりである
これは、「ヨハネの黙示録」からの引用のようです(22章13節)。しかし、出典であるとか、誰の話した言葉であるかであるとかは、書かれていません。したがって、これは「暗示引用」にあたります。
我はダビデの若枝
また子孫であり 輝く
明けの明星である
これも、「ヨハネの黙示録」からの引用のようです(22章16節)。しかし、さきほど書いたのと同じ理由によって、これは「暗示引用」にあたります。

つぎ。
きたりませ きたりませ
——然り 我はすぐに来る
これは、「ヨハネの黙示録」からの引用のようです(22章20節)。これも「暗示引用」にあたります。

…と、引用されているのは、この5カ所のようです。私はキリスト教とも縁がないし、聖書を読んだこともありません。ですので、googleをフル活動させて出典を探しました。多少の間違いがあるかもしれません。

  *

さらにいうと。

上で引用したのは、『小人たちが騒ぐので』の中の「小人たちが騒ぐので(2)」に収録されているものです。で、この「小人たちが騒ぐので(2)」のサブタイトルを見てみると、こんなことが書いてあります。
〜小人たちが騒ぐので(2)〜

我思う 故に我あり じっと手を見る
哲人まんが家・川原教授の頭の中は一体どーなっているのか
ちょっと覗いてみたいアナタにおくる
必読のエッセイコミック!
(19ページ)
この「我思う 故に我あり」「じっと手を見る」というところも、引用です。
「我思う 故に我あり」
のほうは、デカルトの言葉です。「Cogito ergo sum」(コギト・エルゴ・スム)と言ったりもします。

で、
「じっと手を見る」
のほうは、石川啄木の短歌です(念のため書いておくと、これは「ぢつと手を見る」を現代の仮名遣いにしたものです)。

これらは、どちらも「暗示引用」に分類することができます。



レトリックを深く知る

深く知る1「引用法」とほかのレトリックとの関係

深く知るa「引用法」と「明示引用」「暗示引用」との違い
この「引用法」は、大きく分けて2つあります。それは、「誰の書いた、どの部分からの引用なのか」を明記するかしないかによって分けられます。

この区別によって「引用法」のグループは、つぎの3つに分類されます。
明示引用:「誰の書いた、どの部分からの引用なのか」が、はっきりわかる場合
暗示引用:「誰の書いた、どの部分からの引用なのか」が、書かれてはいないが分かる場合
引喩:よく知られている表現を、暗示的に引用する場合
くわしくは、それぞれの項目を参照して下さい。

深く知るb「引用法」と「本歌取り」との関係
日本には古くから、「本歌取り」というかたちで、多くの「引用」がおこなわれていました。

そして現代は、小説・音楽など、さまざまな分野で次々と新しい作品が創られています。そして、新しい作品は、もとからあった作品の影響を受けていることが多くあります。つまり、前からあったものの影響を受けて、新しい作品がつくられる。それは、大きく見れば「引用」ということができます。

このことは、マンガについても同じことがいえます。マンガでも大きく見れば、いろいろな「引用」が見られます。

深く知るc「引用法」の引用元となるレトリック
「引用法」で借りられる物は、他の文章や作品のものではない場合もあります。「名言」や、「成句」・「格言」・「ことわざ」・「故事」。それに、よく知られている「詩歌」など。借りてくるものは、いろいろなものがあります。

深く知る2「引用先」と「引用元」との関係

「引用法」によって「引用」された文や言葉は、引用元となっている文や言葉と、完全に一致するものではありません。

というのは、引用元では、そこに一つの文脈があったわけです。その文脈から「引用」によって切り離されて新しい文脈に組み込まれたことで、新しい文脈からの影響を受けることになります。したがって、「引用」の元となっている文または言葉と、新たに「引用」された文または言葉とは、完全に一致するものではありません。

深く知る3「引用法」の依存性

この「引用法」に属するレトリックと、「パロディ」に属するレトリックには、1つの共通点があります。それは、「一流でよく知られているものに依存して作られている」というところです。

つまり、「引用」するものは有名でなければならないということです。だれも知らないようなものを「引用」してきても、ちっとも力を発揮しません。あくまで、「読み手」または「聞き手」のひとが、どこから「引用」してきたのかが分かるということが大切になってきます。




レトリックの呼び方

呼び方 引用法・引用


関連レトリック

明示引用暗示引用引喩パロディ、パスティーシュ、本歌取り

参考資料

●『日本語修辞辞典』(野内良三/国書刊行会)

このページのネタ本。レトリックの視点からみた「引用」を、過不足なく解説してあると思います。
●『原稿用紙10枚を書く力(だいわ文庫 9−4 E)』(齋藤孝/大和書房)

文章を書きたい人が、この本のおもな読み手だと思います。ですが、「引用」についてかなり長い説明がされています。レトリックでいう「引用」ではなく、作文技術を知りたい人には、こちらをオススメします。
●『引用の想像力』(宇波彰/冬樹社)

1冊丸ごと、引用について書かれています。また、『日本語のレトリック(講座 日本語の表現 5)』(中村明[編]/筑摩書房)には、同じ者が執筆を担当した部分があります。


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