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字喩 じゆ charade


『魔探偵ロキRAGNAROK』2巻87ページ(木下さくら/マッグガーデン BLADE COMICS)
  • まゆら先生「あぁ、もっと 判りやすいものも
  • あるんだよ-
  • 一つだと1本 2つだと結構増えて
  • 3つだとたーくさん 何だと思う-?」
  • (キーンコーンカーンコーン)
  • 「終わりだね- じゃあねー」
  • ロキ「あぁ ちょっとまゆら!」
  • まゆら先生「………」
  • ロキ「答えは 「木」でしょ?
  • (木→林→森)
  • それがどーか…」
  • まゆら先生(べち!!)
  • ロキ「ぎゃ!!」
  • まゆら先生「正解だけどー 先生を呼びすて
  • にしちゃダメなの-」
  • ロキ「す、済みませェン」
-『魔探偵ロキRAGNAROK』2巻87ページ(木下さくら/マッグガーデン BLADE COMICS)
  • 定義重要度3
  • 字喩 は、漢字の形をもとにした謎解きのレトリックです。漢字の分解などによって新しい言葉をつくる、一種のことば遊びです。

  • 効果
  • 効果1 漢字に対する遊び心をあらわす
  • 漢字に対して、遊び心をもって接しているということになります。
  • キーワード:遊び心、戯れる、遊戯、ユーモア、シャレ、ダジャレ、軽口、地口、ふざける、ざれる、冗談、ジョーク

  • 効果2 ふくらみを持たせたり趣をそえる
  • 「漢字のカタチ」にたいして、ふくらみを持たせたり、趣をそえることができます。
  • キーワード:ふくらみ、ふくらむ、ふくらす、ふくらます、趣、風情、情趣、風趣、趣向、風韻、風情、余情、余韻、味わい

  • 効果3 歴史上の意外な事実を明らかにする
  • 「字喩」を使って、漢字をパーツごとに分解する。そして、ここで分解されたパーツ1つ1つを見ていく。すると、漢字をつくりだした古代の人々の行動などを、知ることができることがあります。
  • キーワード:行動、振るまい、所為、暮らしかた、暮らし、明け暮れ、明かし暮らす、社会、世の中、世間、歴史、文化、文明、伝承、来歴、由緒、哲学

  • 使い方
  • 使い方1 漢字をパズルゲームのように使う
  • パズルの問題を作る人は、漢字のパーツになっている文字を分解する。それにたいして解答をする人は、バラバラにされたピースをもとに戻すことで、正解にたどりつく。これが「字喩」です。
  • キーワード:パズル、クイズ、問題、謎、ピース

  • 使い方2 漢字を覚えるのに使う
  • 漢字を覚えるのに、役立つことがあります。これは、「字喩」がもともと持っていた性質ではありません。ですが漢字を覚え込むために、役立てることができます。

  • 例文を見る)
  • 引用は『魔探偵ロキRAGNAROK』2巻から。

    主人公は、ロキ。

    ロキ、見た目は子供。でもロキは、本当は「北欧神話の邪神」。だけど、罰を受けて神界から落とされ、子供のすがたで人間界に暮らしている。だから今は、「見た目は子供、頭脳は大人」という、どっかで聞いたことのあるフレーズが、まさに当てはまる男の子。いちおう、燕雀探偵社で探偵をしている。

    それに対して「まゆら」。彼女は、「ミステリー好き」。燕雀探偵社が仕事としているミステリアスな事件の探偵に興味を持っている。自称は、「ロキの名助手」。

    …と、上に書いたのが「魔探偵ロキRAGNAROK」の世界観です。しかし、画像として引用した部分では、ちょっと違っている。「まゆら」が学校の先生をしていて、ロキたちがその生徒、という「学園コメディ」になっているのが、引用の部分となっています。

    で、その「まゆら先生」がロキたち生徒に出した「字喩」が、引用のシーン。

    • まゆら「一つだと1本 2つだと結構増えて
    • 3つだとたーくさん」

    というのが、「まゆら先生」が出した「字喩」となっている問題。

    で、その答えに当たるのが、ロキの言っている、

    • 答えは「木」でしょ?

    というもの。

    本当は、答えの部分を画像として引用しないで、このサイトを読んでいる人に解いてもらおうかとも思った。けれど、それはちょっとイジワルかなと思いなおして、答えも引用しておきました。

  • 例文を見るその2)
  • 『僕は友達が少ない』2巻42~43ページ(いたち[漫画]・平坂読[原作]/メディアファクトリー MFコミックスアライブ)
    • 夜空「部室でエロゲーをやる 貴様の変態性を
    • 作品を持つ芸術性で 正当化しようとするなど
    • その作品や 芸術そのものに 対する冒涜だ!」
    • 星奈「ぐぐっ」
    • 夜空「ほら 素直に 言ってしまえ
    • 自分は変態ですと
    • 作品の重厚なテーマ性や
    • 奥深さなんて本当は どうでもよくて
    • ただエロいシーンを見て
    • 興奮していただけの
    • 痴女なのですと 告白してしまえ」
    • 星奈「ち…違う…! あたしはセシリアと
    • 仲良く なりたかっただけ…!
    • げ…下劣な感情が 入る余地なんてないわ!
    • ほら このシーンだって!」
    • 夜空「そ そんなの見せるな
    • 馬鹿! 変態!」
    • 星奈「あたしは変態じゃない!
    • いい?このグラフィック
    • だってもちろん全然まったく
    • これっぽっちも いかがわしくないの!」
    • 星奈「芸術的な物語を彩る
    • 芸術的な絵を見て いかがわしく思うなんて
    • あんたこそ 変態じゃないの!?」
    • 星奈「あんたみたいのが 将来アグネヌ・チャソや
    • 里予田耳口王子 みたいになって
    • 思想統制や焚書を やろうなんて
    • 気の狂ったことを 言い出すのよ!」


    次のマンガは、『僕は友達が少ない』2巻から

    長い黒髪の女の子が、三日月夜空。見た目はキレイ。だけど性格は悪いし、かなりの毒舌家。友達が少ない。

    金髪の女の子が、柏崎星奈。こちらも容姿端麗。しかし、「クラスの男子をご褒美に踏んであげたりすると、何でも言うことを聞いてくれる」とのこと(1巻86ページ)。そんなわけで友達が少ない。

    そして最後のコマで登場しているのが、主人公の羽瀬川小鷹。外見が、ヤンキーそのもの。やはり友達が少ない。

    ここは「隣人部」。この隣人部というのは、友達を作りのための部。上の書いた3人(三日月夜空、柏崎星奈、羽瀬川小鷹)も、この「隣人部」という部に入っている。

    ある日のこと。夜空と小鷹は、いつも部活で使っている部屋に入る。すると、そこでは星奈がゲームをしていた。よく見ると、それはエロゲーだった。

    部室でエロゲーを楽しむ、星奈。…なかなかのチャレンジャーである。

    とうぜん、言いわけをする。エロゲーは、芸術作品だとか。そんなあたりからが、引用した部分となります。

    しかし、「字喩」が使われているのは、そんな言いあいそのものではありません。星奈の言った、
    里予田耳口王子

    (漫画は縦書きだけれど、)インターネットのページは横書きです。なので、誰のことを指しているのか分かった人も、いるのではないかと思います。

    これは、「野田聖子」を意味しています。つまり、

    里予
    耳口王


    というわけです。

    このような、漢字を使った文字の遊びを「字謎」といいます。

    なお、そのすぐ手前に書いてある、
    アグネヌ・チャソ

    というのは、「アグネス・チャン」のことです。誤植ではありません。「ス」の代わりに「ヌ」が入って、「ン」ところに「ソ」が入る。そういったわけで、「アグネヌ・チャソ」になります。

    これは「字謎」というわけではありません。ですが、これについては、ピッタリしたレトリック用語は思いつきません。しいて言えば、「 錯字・音字換入 (paragram)」が似ているという気がします。

  • 例文を見るその3)
  • 『ひつじの涙』2巻166ページ(日高万里/白泉社 花とゆめCOMICS)
    • 天馬「先生は今っ 生徒達の為に
    • 働いてきたんだぞ?」
    • (↑職員会議)
    • 君島「そうだっ 俺だって
    • 生徒の代表として
    • 働いて来たん だぞ!?」
    • (↑生徒会役員会議)
    • 天馬&君島「まさに
    • 学校の為 人の為!!
    • 《人の為》
    •   -と書いて《偽り》と読む
    • 蓮見「働いて来てねーじゃ
    • ねーか!!」


    ほかに「字喩」の例として、『ひつじの涙』(日高万里/白泉社 花とゆめコミックス)から。

    「人」の文字を「にんべん(イ)」に変えてしまっているので、スマートな例ではない。だけれど、ストーリー展開としておもしろいので、例に出してみました。


  • レトリックを深く知る
  • 深く知る1 「字喩」の有名な例
  • たとえば、「米寿」の「米」が「八十八」に分解できることから「88歳」を意味するようなものが、この「字喩」にあたります。
    他には、『万葉集』にある「山上復有山」が、山の上にまた山があることから「出」の字となるものなどが有名です。

    また、百人一首にも入っている、「…むべ山風を嵐といふらむ」(文屋康秀)というもの。これも、「山」プラス「風」で「嵐」ということばが導き出されています。


  • 深く知る2 「字喩」の分類
  • 『漢字のなぞかけ 字謎のふしぎ-あなたの日本語IQが上がる?』(清水潔/実業之日本社)によると、「字喩」は次の8つのタイプに分かれると説明されています。

    • 1.『漢字一字を単純に分解した字謎』
    • (例:「別れると一人 何?」→「大」)
    • 2.『漢字一字を単純に分解した文芸的字謎』
    • (例:「干柿の に鈴なりの がたち」→「柿」)
    • 3.『漢字のつくりの一部に注目させる字謎』
    •  (例:「上には下があり 下には上がある 何?」→「一」)
    • 4.『漢字にある共通のつくり(組み合わせ)を見つける字謎』
    • (例:「兆しがあればとびはね 止まればあとを残す 危なくなればひざまずく」→「足」)
    • 5.『漢字やことばの指示に従って解読する字謎』
    • (例:「午後は虚心」→「十七」 ※「午」の「後」にある「十」の部分と、「虚」の「中心」にある「七」のこと)
    • 6.『連想を必要とする字謎』
    • (例:「みごもる くちびる さよなら、またね 何?」→「辰」)
    • 7.『当て字の字謎』
    • (例:「大雲雲 何?」→「やまもも」 ※「大和(やまと)」の「大」と、「出雲(いずも)」の「雲」のこと)
    • 8.『字覚え歌の字謎』
    • (よく似ている間違いやすい漢字や字画数の多い漢字を覚えるための、覚え歌)


    これが、その8つの分類です(この本では「字謎」という言葉を使っていますが、「字喩」と同じものです)。


  • 深く知る3 「charade」という訳について
  • 「字喩」にたいして「charade」という訳をすることについて。

    この「charade」という訳は、『なぞの研究(講談社学術文庫492)』(鈴木棠三/講談社)が採り入れているものです。このサイトでは、ここから「字喩」の訳として「charade」を採用させていただきました。

    ですが。
    そもそもヨーロッパには、漢字がありません。ですので、漢字の形をつかった「 ことば遊び 」にあたる「字喩」というものも存在しません。

    じゃあ「charade」という単語は、そもそもいったい何を意味しているのか。これは、ある1つのことばを作っているパーツを伝えることによって、そのことばを当てさせる遊びのことを指していいます。

    ですので漢字がある国でいえば、「charade」が「字喩」にあたるということがいえます。つまり、ある1つの漢字を作っているパーツを伝えることよって、その漢字を当てさせる遊びのことをいうと考えることができます。

    ですので、「字喩」=「charade」ということにしました。

    なお、「字喩」に対応する英語としては。わりと「anagram(アナグラム)」というのをあげている本がたくさんあります。
    ですが。このサイトでは、せまい意味での「 アナグラム 」とダブってしまうのを防ぐため、「charade」としておきます。


  • 深く知る4 「字喩」の歴史
  • もともと「字喩」は、中国で早くから発達した知的な「ことば遊び」でした。つまり、日本に漢字が伝来したときに、この「字喩」も一緒に伝わったのです。

    なので、この「字喩」は、はじめ中国でつくられた「レトリック」です。

    また、もともと「字喩」は教養人のものでした。それは、一般民衆は漢字が書けなかったからです。しかし時代が下るにつれて、庶民も漢字を読み書きできるようになりました。ですので、庶民も、この「字喩」で遊ぶようになりました。

  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 字謎(※)・字喩
  • 呼び方3
  • 柝字・戯書・文字あそび
  • 呼び方1
  • 謎・戯訓・アナグラム・漢字あそび・漢字の異分析・文字描写・漢字分解

(※)「字謎」については、「じなぞ」「じめい」のどちらの読みかたも使われます。
  • 参考資料
  • ● 『漢字のなぞかけ 字謎のふしぎ-あなたの日本語IQが上がる?』(清水潔/実業之日本社)
  • 日本で「字謎」についてだけで書かれた本は、他には見あたりません。徹頭徹尾「字謎」 について書かれています。上に書いた「1.」から「8.」の分類も、この本を見れば、もっと分かりやすい説明が書いてあります。ということで、おすすめの本です。

  • ● 『なぞの研究(講談社学術文庫 492)』(鈴木棠三/講談社)
  • 「字喩」について書かれた本の著者では、この人の右の出る人はいません。「字喩」の歴史を中心に、非常にくわしく書いてあります。