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添義法 てんぎほう --


『人形草紙 あやつり左近』1巻147ページ(小畑健・写楽麿/集英社 ジャンプコミックス)
  • ずしゅうにめんきにんぎょうじごく

  • 『豆州弐面鬼傀儡地獄』

-『人形草紙 あやつり左近』1巻147ページ(小畑健・写楽麿/集英社 ジャンプコミックス)
  • 定義重要度2
  • 添義法 は、フリガナを使うレトリックです。漢字本来の読みかたとは違ったフリガナをふることで、漢字の部分とフリガナの部分との二重性をもたせることができます。

  • 効果
  • 効果1 センスを持ったフレーズを作り出す
  • センスのあるフレーズを作ることで、送り手(読み手・聞き手)が共感できるようなものにすることができます。
  • キーワード:センス、感応、共感、同感、直感

  • 効果2 感情を込めた表現にすることができる
  • 感情を豊かに表現でき、送り手(書き手・話し手)の気持ちを込めた表現にすることができます。
  • キーワード:感情、気持ち、情意、情感、心持ち、感じ

  • 効果3 ルビによって情報より多く伝えることで、意味を分かりやすくする
  • ルビを振られる文字(=親文字)で書かれていることばに、ルビを振る。このことによって、意味を受けとりやすくすることができます。
  • キーワード:分かる、受けとる、知る、解する、解せる、飲み込む、疎通、了承、承知、明瞭、明らか、はっきり、ありあり、まざまざ、明白、見るからに、鮮明、明快、判然

  • 使い方
  • 使い方1 フリガナを巧みに利用する
  • もともとの読みかたをせずに、目新しいフリガナを振る。そのことによって、鮮やかで巧みなことばを生みだすことができます。
  • キーワード:巧み、上手、鮮やか、堪能、巧妙、絶妙

  • 注意
  • 注意1 使いすぎると、わずらわしい
  • ルビを振るというのは、それを読んでいる人に負担をかけてしまうものです。目線がまっすぐに進まずに、一度ストップしてしまうからです。なので、使いすぎには十分注意する必要があります。

  • 例文を見る)
  • 引用は『人形草子 あやつり左近』1巻。

    なんといっても、
    『豆州弐面鬼傀儡地獄』

    という、いかめしい漢字9文字でつくられているタイトルにおどろきます。
    この「豆州弐面鬼傀儡地獄」という意味が分かります! なんて人はいないと思うので、使われている意味を辞典で調べてみました。『広辞苑』(岩波書店)によると、
    • 「豆州」…伊豆国の別称。
    • 「傀儡」…あやつり人形。くぐつ。でく。

    だとのことです。

    さて、今回「添義法」として例として出したいのは、「傀儡」という部分です。
    この「傀儡」は、ふつう「かいらい」と読みます。「にんぎょう」とは読みません。それにもかかわらず、あえて「傀儡」という漢字を使い、しかもそれに「にんぎょう」というフリガナをふっているところが「添義法」であると考えます。

    つまり、
    • フリガナの「にんぎょう」 → 人形そのものの意味
    • 漢字の「傀儡」 → 人形遣いで使う人形の意味     

    というふうに、二重性がある。そこが「添義法」であるというわけです。
    このマンガは、人形と人形遣いのコンビネーションで怪事件を解決していく、というものです。その二人での事件解決という内容と、今回の「添義法」を使った二重性とは、合っているものだと思います。


  • レトリックを深く知る
  • 深く知る1 「添義法」と「あて字」との違い
  • 私がイマイチよく分からないのは、「 あて字 」というレトリックとの差です。
    ですがこのサイトでは、とりあえず次のように区別しておきます。

    「添義法」は、かなり奇抜で一般には使われないような独自性の高い、意外性のあるフリガナが振られている場合。
    あて字 」は、一般にも見受けられて独自性は低いけれども、多少は意外性のあるフリガナが振られている場合。

    と、このように区別しておきます。なお「 あて字 」についてくわしくは、その項目を参照して下さい。


  • 深く知る2 コミックスに使われる「添義法」
  • この「添義法」。コミックの世界では、わりとよく見かけるレトリックです。

    たとえば、無作為に本箱から手に取ったマンガ本が『D・N・ANGEL』(杉崎ゆきる)の1巻だとします(単に、偶然そうだっただけです)。この本から異例なフリガナをふっている例を、ぼちぼち取りだしてみましょう。

    このコミックを一言で解説しておけば、
    14歳の誕生日、丹羽大介の体に異変が起きた。好きな女の子のことを強く意識すると「怪盗」ダークに変身してしまう。ついでに、ダークが好きな女の子のことを強く意識すると、丹羽大助に戻ってしまう。

    というコミックです。では、「ヘンなフリガナ」探索スタート。
    • 「恋愛」に「トラブル」とフリガナがふってある(5ページ)。恋愛で変身するなんて、トラブルにまちがいない。
    • 「幸運」に「ラッキー」とフリガナがある(13ページ)のは、まあ、それほど意外性はないけどいちおう。
    • 「DNA」に「オレ」とフリガナがふってある(27ページ)は、この作品ならではのフリガナ。DANに刻み込まれているから、怪盗ダークに変身するんですね。
    • 「聖なる乙女像」に「セイントティアーズ」とフリガナ(28ページ)。
    • 「14歳になったら」に「成人したら」とフリガナがある(32ページ)のは、もはや、フリガナに漢字を使うという荒技がみられる。
    • 「非現実」に「レベルアップ」とフリガナがある(63ページ)。こんなの言語明瞭・意味不明瞭。
    • 「怪盗」に「ダーク」のフリガナ(75ページ)は、まあ、設定そのままではある。
    • 「もう一人」に「ダーク」のフリガナ(77ページ)は、「ダーク」のことを「もう一人の自分」だと思っている丹羽大介の感情が出ています。
    • 「学校」に「こんなとこ」のフリガナ(84ページ)は、そりゃまあ、学校=こんなとこでダークには変身したら困るわな。
    • 「上司」に「ガキ」のフリガナ(92ページ)は、作品の設定上、そうなっています(「中断法」の項目でその一端を引用しているけど、詳しくは本を読んでくれ)。
    • 「ダーク」に「オレ」のフリガナ(94ページ)は、「怪盗ダーク」である姿のほうの自分、っていう意味。
    • 「非現実」に「コンナン」のフリガナ(96ページ)は、ふつうの部類。
    • 「真実」に「ホンモノ」のフリガナ(97ページ)も、わりとふつう。
    • 「堕天使」に「ふたつめ」のフリガナ(98ページ)なんかもあります。お手上げです。
    • 「大助」に「もと(にもどっちまう)」のフリガナ(132ページ)は、作品の設定上、そのとおりでございます。

    以上、『D・N・ANGEL』1巻のうち、同作品部分の「ヘンなフリガナ」を探索しました。
    やっぱり、沢山ありますね。マンガが「総ルビ」を基本としているからでしょうか?

    でも、よく考えてみると、杉崎ゆきる先生は「添義法」を多く使う漫画家さんのようです。
    『卒業M』(杉崎ゆきる・有栖川ケイ/角川書店 あすかコミックス)のサブタイトル。1巻は『?僕たちの方程式?』となっているのですが、その「方程式」には「こたえ」とフリガナがついています。並べて書いていくと、
    • 1巻。『卒業M-僕たちの方程式-』の「方程式」には「こたえ」のフリガナ。
    • 2巻。『卒業M-僕たちの放課後-』の「放課後」には「じかん」のフリガナ。
    • 3巻。『卒業M-僕たちの鼓動-』の「鼓動」には「リズム」のフリガナ。
    • 4巻。『卒業M-僕たちの未知数-』の「未知数」には「ひみつ」のフリガナ。
    • 5巻。『卒業M-僕たちの友情-』の「友情」には「きずな」のフリガナ。

    タイトルから、こういった「添義法」を使っているのだから、本の中は「推して知るべし」といえます。なお、杉崎ゆきる先生が描いていない、続編の「卒業M+(Plus)」(西臣匡子・有栖川ケイ)では、こういったフリガナは付いていません。やはり、杉崎ゆきる先生が描いているためにフリガナがふってある、と見ていいでしょう。


  • 深く知る3 「添義法」と「人工言語」との関係
  • 「類義区別」のところで書いたように、『星界の紋章』『星界の戦旗』という作品では、会話が「アーヴ語」という「 人工言語 」でされています。その中では、そのアーヴ語流の言い回しが「フリガナ」として(カタカナで)書いてあります。

    そんなことにも、この「添義法」が使われることがあります(これは「 人工言語 」が使われているという特殊なものだからだと思いますが)。


  • 深く知る4 英語の読み方をフリガナで書く「添義法」
  • 『School Rumble』1巻3ページ(小林尽/講談社 少年マガジンコミックス)
    • #01 PlAN1 FROM OUTERSPACE
    • (プランワン フロム アウタースペース)

    • #02 EASY RIDER
    • (イージー ライダー)

    • #03 DEEP SPACE NINE
    • (ディープ スペース ナイン)

    • #04 BOOK OF LOVE
    • (ブック オブ ラブ)


    続きまして。
    漢字に対するフリガナではありませんが、1つ気になったものを紹介しておきます。

    『School Rumble』の目次に当たるページです。それぞれの話ごとのタイトルが書いてあります。

    しかし、すごく読みにくい。
    タイトルの英語の上に、カタカナで読み方がフリガナとして書いてあるのです。けれども、こんなふうに「英語」と「カタカナ」とが交互に書かれていると、すごく読みづらい。

    私には、この「英語にカタカナでフリガナ」は邪道ではないかと思えます。なぜなら
    • 英語の発音を、忠実にカタカナにすることはできない(例えばLとRの発音の違いを、カタカナでどうやって表現するのか?)
    • 英語の読み方が分かったからといって、英語の意味までも分かるわけではない

    からです。

  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 添義法

  • 参考資料
  • ● 『短歌レトリック入門-修辞の旅人』(加藤治郎/風媒社)
  • 「ルビ」という用語で、「添義法」とほとんど同じものを扱っています。かなりの分量を使って書かれています。