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頓降法 とんこうほう bathos
——『新☆だぁ!だぁ!だぁ!』1巻149〜150ページ(川村美香/講談社 コミックスなかよし)
未宇 宇宙病!?
ルゥッ…? どーゆう病気なのっ」
ルゥ 未宇は知らない
だろーけど…
それは…おそろしい
病気だよ……
五十時間以内に
薬を飲ませないと…
熱が上がりつづけ…
…さいごは…っ
タコのすがたに
変貌するんだ——っっ!!
未宇 ずるっっ)
——『新☆だぁ!だぁ!だぁ!』1巻149〜150ページ
(川村美香/講談社 コミックスなかよし))


定義重要度

頓降法は、は、段々と盛り上がってきたものが、急に落ちるように展開するレトリックです。途中までは「漸層法(狭義の)」のように、次第に盛り上がっていくように進んでいきます。ですが、最後でステップを踏み外したように、急に転落するといった表現です。


効果

効果1ナンセンスで滑稽な文など、受け手をバカにしたようなフレーズを作る

バカバカしいと思ってしまうような、滑稽な文。それから、知らぬ存ぜぬという態度をとってウラでは嘲笑しているような文。そんな文を、作り出すことができます。
:滑稽、おどける、ナンセンス、バカらしい、バカバカしい、ユーモラス、コミカル、諧謔、ユーモア、冗句、ジョーク、冗談、道化る、おどけ、ふざける、とぼける、すっとぼける、そしらぬ、うそぶく、飄逸、超然、飄々、何気ない、関せず、無関心、あざ笑う、嘲笑、冷笑
効果2受け手は、肩すかしを食らったという気分になる

「頓降法」を使うと、話の流れが相手の予想に反して急に落ちる、ということになります。そのような状況におかれた受け手(読み手・聞き手)は、肩透かしを食らったような気分になります。
:はぐらかす、ごまかす、くらます、言いくるめる、肩すかし、からかう、冷やかす、冷ややか、茶化す、はやす、はやしたてる、あざ笑う
効果3肩すかしを食らった受け手の様子を、あざ笑う

肩すかしを食らった受け手の様子を、あざ笑うといったこともあります。
:諷刺、イヤミ、嘲笑、もの笑い、もの笑う、あざ笑う、軽薄、上滑り、軽々、卑称、見下げる、見下す、みくびる、おとしめる、軽んじる、あなどる、さげすむ、ないがしろ、軽べつ、侮蔑、べっ視、侮辱、軽々しい

使い方
使い方1盛り上げておいて、最後に落とす

最初はだんだんと盛り上げておきながら、最後に急に落とす。次第に登ってきたけれども、頂上までには届かずに転落させる。そういったものが、「頓降法」です。
:急落、暴落、崩落、急に落とす、転落、落ちる、落っこちる、転げ落ちる、直下、はめを外す、低次元



例文を見る例文を見る(末尾)

引用は『新☆だぁ!だぁ!だあ!』1巻から。

主人公は「未宇」。

「未宇」は、“時空のひずみ”に入ってしまい「オット星」へと来てしまった。そこで会ったルゥという少年が、地球まで宇宙船で送ってくれることになった。

しかしオット星から地球までは、距離が長い。宇宙船での旅の途中で、いろんなトラブルと遭遇する。

画像で引用したのは、そんなトラブルのうちの1つ。宇宙船で一緒に旅をしていた「ミニニャー」の熱が、どんどん上がっていく。「宇宙病にかかってるな……」というルゥの言葉に対して、未宇が「宇宙病!?」と聞き返しているのが、引用した場面になります。

ルゥは「宇宙病」について、こんなふうに説明します。
未宇は知らない
だろーけど…
それは…おそろしい
病気だよ……
五十時間以内に
薬を飲ませないと…
熱が上がりつづけ…
…さいごは…っ」
という感じで、熱が上がっていくにつれて段々と悪化していくようすを話します。が、最後に来て
タコのすがたに
変貌するんだ——っっ!!
と言います。いきなり「宇宙病」が、どうでもよさそうな病気になってしまいました。

まあ、確かに「タコのすがたになる」のはイヤです。でも、いままで段々と病気が悪化していくことを説明した後に「タコのすがたになる」と言われたら、急に転落したような感じを受けます。この点が「頓降法」にあたります。



レトリックを深く知る

深く知る1「頓降法」に関連するレトリック

深く知るa「頓降法」に近いレトリック
「頓降法」に近いレトリックについては、「漸層法(広義の)」のほうにまとめてあります。くわしくは、そちらも参照して下さい。

深く知るbちょっとした用語の不統一について
ここに、
  • 漸降法
  • 「反漸層法」
  • 「頓降法」
という日本語のレトリック用語があります。そして、それに対しての、
  • bathos
  • anticlimax
という英語のレトリック用語があります。

この用語をどのように区別するかについては、統一されていないように思われます。そもそも、日本語のほうには3つの用語があるのに、英語のほうには2つしか用語がない。そういったことからみても、まだ統一された考えかたがない、ということを物語っています。

この点についてこのサイトでは、次のように区別することにします。

「頓降法」(=bathos)は、ことばが段々と盛り上がっていったあとに、最後で急にストンと落とすというレトリック。
漸降法」(=anticlimax)、は、ことばが段々と弱まっていくというレトリック。
そして、あまってしまった「反漸層法」については、「漸降法」の別の呼び方だということにします。

ただしこの区分は、あくまで、ひとつの考えかたです。他の人が書いた本だとか、他の人が作ったサイトでは、違った説明がされている場合があります。
ですので、その解説をしている人が、どのような区別をしてレトリック用語を使い分けているか。そこのところを、よく見きわめて下さい。


深く知る2めったにない「頓降法」のパターン

——『クロスゲーム』1巻22ページ(あだち充/小学館 少年サンデーコミックス)
樹多村 したがって、
あいつを好きな
男達も——
たくさんいて…)

学年で一番
ケンカの強い

明石くん。)
三番目に強い
林くん。)
五番目の
織田くん。)
圏外の
樹多村くん…)
——『クロスゲーム』1巻22ページ
(あだち充/小学館 少年サンデーコミックス)
例文は、『クロスゲーム』から。

主人公は、樹多村光(きたむら こう)。小五。

そして、樹多村の口から
「好きな男達がたくさんいて」
と言われている女の子は、月島若葉。彼女も、同じく小五。

でも、まあ。
くわしいキャラ設定は、今回は説明する必要がなさそうです。

たとえば、樹多村の家がスポーツ用品店で、月島若葉の一家がバッティングセンターを営業しているという都合もあって親しくしているとか。そういったことは、「頓降法」というレトリックとは関係ありません。

じゃあ、何が「頓降法」と関係しているのかというと。それは、主人公の樹多村のことを「おもしろくない」と思って攻撃してくるキャラたちの、ケンカの強さををならべた順番です。

右の例文を見ても、すぐにわかると思いますが。
学年で一番
ケンカの強い
  ↓
三番目に強い
  ↓
五番目の
  |
圏外の

という説明の順番になっています。つまり、1番(トップ)→3番→5番、というところまでは、順調に「下がって」いたはずなのです。それなのに、とつぜん「圏外」という「急に落っこちた」説明になっています。

これを、レトリックっぽく分析すると。この表現は「頓降法」に加えて、「漸降法」というレトリックもプラスされているともることができます。
「頓降法」も「漸降法」も、どっちもマヌケっぽさを出すためのレトリックです。なので、「マヌケっぽさ」の効果がレベルアップして、さらに強くなっているといえそうです。

なお、この表現については。
降移法」というレトリックにふくまれる、と考えることもできそうです。この「降移法」については、くわしくはリンク先のページをご覧ください。
じつは。
ちょっとヘンな流れをした「頓降法」、というものがあります。

どこが「ちょっとヘン」なのかというと。
途中まで、すでに「下がって」いたものが、急に落っこちる
といったパターンになっている、そんなものがあるのです。




レトリックの呼び方

呼び方 頓降法
呼び方 急落法・急落
呼び方 反漸層法
※「反漸層法」は、「漸降法(下降的漸層法)」(amticlimax)の名前で使われることもあります。ですので、このサイトでは「反漸層法」という用語は原則として使っていません。


関連レトリック

列叙法漸層法(広義の)漸層法(狭義の)降移法、昇移法、漸降法飛移法変態法、頓旋法、転折法、多種列挙

参考資料

●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)

この本が、とりあえず簡潔でしかも重要な点をおさえてあります。特に飛び抜けて参考になるというワケではないのですが。


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