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TOPへ 50音順 使う目的別 佐藤信夫『レトリック事典』の分類 中村明『日本語の文体・レトリック辞典』の分類
 
古語法 こごほう archaism
——『School Rumble』1巻110〜111ページ(小林尽/講談社 少年マガジンコミックス)
八雲 ねぇ 姉さん
何をしたいのか
まだわからないんだけど…
邪魔じゃない その弓……」
天満 ん! 気配じゃ
気配を感じる!
八雲殿 拙者
朝餉は遠慮致す!
——ここ6コマ省略します——
天満 情熱あふれる
恋文(ラブレター)の出し方…
それは矢文!!
これよ!」
——『School Rumble』1巻110〜111ページ
(小林尽/講談社 少年マガジンコミックス)


定義重要度

古語法は、古くなった言葉をあえて使うレトリックです。
つまり、むかしは普通に使われていたけれども、現在では用いられなくなってしまった古めかしい言いまわしを、意図的にすることをいいます。


効果
基本的な効果

効果1古めかしいことばで、威厳や神々しさを持たせる

古いことば。そしてその背景にある、昔から長らく引き継がれてきた考えかた。そこには、いかめしい荘重な雰囲気があります。また、雅やかで奥ゆかしいイメージが出ることもあります。さらに時には、それ以上の神々しさをも持ちあわせていることもあります。
:荘重、厳か、いかめしい、厳として、粛として、厳然、尊厳、荘厳、森厳、冷厳、粛然、粛々、物々しい、神々しい、神聖、聖、古風、昔風、いにしえ風、古い趣き、古い時代の趣、典雅、温雅、﨟長けた、ゆかしい、奥ゆかしい、雅やか
効果2古くさい、時代おくれの様子をあらわす

しかし。上に書いたことは、反対に古くさい陳腐なものとなることもあります。つまり、時代おくれというマイナスイメージをいだくこともあるということです。
:古い、古くさい、古めかしい、古色、蒼然、かび臭い、ボロ、時代おくれ、旧式
効果3ふざけている・おもしろい感じを出す

わりと重要な「古語法」の効果として。「ふざけた感じ」「冗談みたいな感じ」を出すというものがあります。これは、【例文を見る・その1】であげられているのが、絶好の例です。
:ふざける、戯れる、たわける、たわけ、ざれる、じゃらす、おどける、おどけ、道化る、ひょうげる、悪ふざけ、ざれごと、冗談、ジョーク、はしゃぐ
現代語と古語とを並べることによる効果
効果4並べられることで、違いを明らかにする(=「対句」や「類義区別」に近い)

現代語と古語とを、近くに並べる。そして、その違いをあざやかに示す。そのことで、現代語と古語との小さな違いを大きくあらわすことができます。
:対句、相対する、相対、対(たい)、対する、相照らす、対応、対比、対照、コントラスト、対置 (⇒「対句」「類義区別」も、あわせて参照してください)
効果5並べられることで、リズム感を生みだす(=「平行体」に近い)
すぐ上に書いたことに近いものですが。現代語と古語とを近くに並べるということは、同じような意味のことばを近くに置くということです。なので、そこには何らかのリズム感を得ることができます。
:並行、平行、並ぶ、並び、並べる (⇒くわしくは「平行体」も、あわせて参照してください)
緩叙法として利用することで得られる効果
以下は、「緩叙法」を使う手段として「古語法」を利用するときに得られる効果です。「緩叙法」というのは、「見せかけだけ、弱めた表現する」というレトリックです。たしかに「古語」は、ふだん使わない。これは「弱めた表現」にあたる。でも、これが「見せかけ」だったとき。この使われた「古語」から、いろいろな特別な効果が引き出されます。 (⇒くわしくは「緩叙法(広義)」をはじめとするページも、あわせて参照してください)
効果6控えめなことばを使って、強調することができる
すぐ下に書くように、「古語」を使うと「控えめの表現」になるはずです。ですが実際には、これと正反対の結果となることが多くあります。つまり、「ワザと遠まわしに言う」とか「これみよがしに持って回った表現をとる」ということです。それは、見た目の表現とは逆に「強調」の効果をあげることを意味しています。
:控えめ、少なめ、控える、つつしむ、手控える、はばかる、消極的、弱い、やわらか、穏やか、やんわり、なだらか、やわらか、ソフト、おだやか、やんわり、誇張、大げさ、強調
効果7間接的に表現することになる
むかし使われていたような、つまり今ではあんまり用いられなくなったようなことば。そのようなものを、使うということは、ダイレクトな表現をしないでおくということです。そのため、間接的な表現となります。
:間接、遠まわし、婉曲、まわりくどい、持って回った、意味深長、抽象的な、不鮮明、不明瞭、不明確
効果8ホンネを隠していることをあらわす
「現代語」ではなく、まわりくどく「古語」を使うこと。それは時として、何かを隠しているようなニュアンスを持った表現になることがあります。
:底力、隠す、しのばせる、ひそめる、韜晦、隠匿、隠蔽、包みかくす、秘める、秘密にする、伏せる、冷淡、つれない、薄情、冷たい
効果9感情的になっていないことを示す
だれしも、とっさに何も考えずに話しをすると。ふだん使っている「現代語」が、口から出てくるものです。そこを、ふだんなら使わない「古語」にしてみる。そのことで、ものに動じていない落ちついた雰囲気を出すことができます。
:冷静、平静、泰然、自若、沈着、従容、動じない、あわてない、クールな、無感情
効果10謙遜をあらわす
これは、「古語法」ではイメージしやすい効果だといえます。古くからある表現を使うことで、つつましさを表現する。しきたりに従った表現を用いることで、謙虚さを見せることになります。
:つつしむ、へりくだる、謙遜、下手に出る、つつましい、つつましやか、謙虚、低姿勢、頭が低い、腰が低い
効果11皮肉をあらわす
考えられないほど、ヘンに「古語」を使うと。いってみれば、相手を見くだしたような。もしくは、遠まわしに嫌味をあらわすようなことにもなります。
:皮肉、当てつける、当てこする、アイロニー、イロニー、嫌味を言う、いやみ、物言い、言いがかり、いちゃもん、苦情、難癖、論難、咎め、咎め立て、とっちめる、なじる、面詰、難詰、難じる、非難する、当てつける、当てつけ、当てこする、面当て、いやみ、嫌気、いやらしい、飽き飽き、うんざり、いとわしい、疎ましい、気疎い、忌まわしい、いけ好かない、気にくわない、気障り、耳障り、聞き苦しい、胸が悪い、苦々しい、虫が好かない、憎い、憎らしい、憎たらしい、恨めしい

使い方
使い方1「古語」を使う

むかしは使われていた。でも、いまはほとんど使われていない。そんなことばを使えば、「古語法」はできあがります。これが、単純で手軽で、しかも得られる効果も大きい方法です。なのでまず、この方法が一番手となります。ふつうは、モノゴトをあらわす名詞のうちで、古い時代のモノを探すことになるでしょう。
:過去、昔、昔日、往時、往古、千古、既往、旧時、ひと昔、大昔、いにしえ、当時、時分、元(もと)、以前、一頃、一時、かつて、過ぐる、使われなくなった、古語、古典語
使い方2古文との文法の違いを利用することもできる

たとえば、係り結びを出してくるとか。ほかには、活用の違いを利用するとか。単に、モノそれ自体を指ししめす単語を古いことばにするだけが、「古語法」ではありません。むかしの「古文の文法」を利用することでも、「古語法」をつくりだすことができます。
:古文、古典、古典文学、古典主義、古典的名作、擬古文、擬古体
使い方3用いる文字や仮名づかいの違いでも「古語法」

むかし使っていた漢字は、もっとゴチャゴチャっとしたものでした。「虫」を「蟲」と書くだけで、なんとなく古い時代のイメージがわいてきます。また、仮名づかいを「旧仮名づかい」にするのも、おなじく歴史を感じさせることができるものです。このようなものも使うことができます。

注意

注意1「ウソの古語」を捏造しない。

「古語法」で使われるのは、むかしのことばです。そして、いまわたしたちが日ごろ使っているのは、現代語です。となると、どうしても「まちがった古語」ができてしまったりするのです。
注意2でも、「100%の古文」もツラい

ですがまあ、100%の古文を使うわけにもいきません。100%の古文を見たら、学生時代の古文の授業を思い出します。おそらく、そこは艱難辛苦や阿鼻叫喚だけの無間地獄だったはずです。そんなヤバイ経験を読み手に思い出させるのは、ひかえておくのが得策でしょう。



例文を見るその1例文を見る(末尾)

例文は『School Rumble』1巻から。

主人公は、塚本天満。高校2年生。

彼女は、烏丸大路というクラスメイトに恋をしている。どうしても、烏丸くんにラブレターを渡したい。

そこでまず天満は、ラブレターを烏丸の下駄箱に入れておいて、読んでもらうという作戦を行う。しかし「天満が自分の名前を書き忘れた」という理由で、作戦1号は失敗に終わる。

で次に、作戦2号を実行しようとしているのが、引用の場面。
ん! 気配じゃ
気配を感じる!
八雲殿 拙者
朝餉は遠慮致す!
と言っている。けれども、この中には古くなって現代では使わなくなった言葉が用いられている。たとえば「拙者」とか「朝餉」とか。あと「〜致す」という言葉も古めかしい感じがする。

で、ダメ押しとして、
情熱あふれる
恋文(ラブレター)の出し方…
それは矢文!!
と、「矢文」という言葉が登場する。これも現在ではふつう使わない。しかも私(サイト制作者)の使っているATOK12(古!)には、「矢文」が辞書の中にない。したがって漢字変換で出てこない。そのことからもわかるように、これは「古語」なのです。

そういったわけで。これは、典型的な「古語法」となっています。

ちなみに「ふざけた感じを表現する」ということができているます。ですので「効果」のほうも、バッチリ基本どおりの「古語法」のルールにのっとっています。



例文を見るその2例文を見る(末尾)

——『ラグーンエンジン』1巻151ページ(杉崎ゆきる/角川書店 あすかコミックス)
等軍焔
(らぐん えん)
  ある日、
おれのクツ箱に
ラブレターが入っていた。」
  ——じゃなくて、
恋文が入っていた。」
——『ラグーンエンジン』1巻151ページ
(杉崎ゆきる/角川書店 あすかコミックス)
2つめの引用は、『ラグーンエンジン』1巻から。

主人公は、「等軍焔(らぐん えん)」と「陣(じん)」の兄弟。

「焔(えん)」と「陣(じん)」は、2人で「凶(マガ)」というものを、祓うことを家業としている。「凶(マガ)」というのは、悪霊とか妖魔とかいったもののこと。

で。
右のシーンは、ある日のできごと。そして、それにたいする「等軍焔(らぐん えん)」のモノローグです。

「等軍焔(らぐん えん)」が通っている、学校のクツ箱。そこに、あったもの。それは、
ラブレターが入っていた。」
  ——じゃなくて、
恋文が入っていた。」
と書かれています。

つまり。
一度「ラブレター」という「現代語」っぽい言いかたをしておきながら。すぐに、それを直して「恋文」とコメントしている。

こうすることによって。効果4で書いた「並べて書くことで違いをハッキリさせる」という効果が、よく出ています。

なお。
「等軍焔(らぐん えん)」の家業が、「凶(マガ)」というものを祓うことだということ。つまり、「古くからある、いわくいわれのあるモノゴト」を相手にしているものだということ。

そこからして。この「恋文」は、「凶(マガ)」と呼ばれるものたちに近いヒトによって書かれたものなんだろう。…っていうのも暗示していたりします。



レトリックを深く知る


深く知る1古語法の作りかた
「古語法」でいうところの「古語」。それはふつう、次の3つのものをいいます。

「現代語」と「ことばのカタチ」は同じだけれども、
その「あらわしている意味の内容」がちがうというもの。


「現代語」と「意味の内容」は同じだけれども、
それを「あらわしていることばのカタチ」が違うというもの。


「もはや、いまではその概念そのものがなくなった」などといったような事情で、
「現代語」としては、使われることがなくなっているもの。
(これは、言いかえると「廃語」とか「死語」に当たります)
そして、さらに。
これに付けくわえるかんじで、プラスされることがあるものとして。

「現代語」と、ほとんど同じ意味で昔も使われていたもの。
(たしかに、昔のヒトが使っていたという意味では「古語」ともいえる)
といった。これも「古語」に含めることもあります。

こういったわけで「古語」は、合計4つに分けることができます。ですので、これより下では、それぞれ詳しく見ていくことにします。

現代とは「ことばの意味」が違うタイプ——古今異義語
まずはじめに。

現代語 古語
あらわしたいと
考えている対象
現代語の灯台 古語の灯台
それを
あらわすために
使っていたことば
灯台

たしかに現代とは、「ことばのカタチ」だけは同じ。でも、あらわしている内容が違う。つまり、単語の意味が別のモノになっている。そんなものを見ていきます。

右にある表。ここは、2つの絵が並んでいます。そして、その下には「灯台」と書いてあります。

この表が、なにを示したいのかというと。

現代語では、「灯台」と言ったばあいには、左の建物をいう。船が安全に行ったり来たりできるように光をともす。そのための建物が、現代語でいう「灯台」です。

しかし古語で、「灯台(燈台)」ということばを使ったばあい。それは、部屋の中で使う照明器具をさします。どうもカタチには、いろいろな種類があったらしいのですが。とにかく夜に、部屋の中を明るくするために、油をいれる。そして、その油から火がつくようになっている。これが、古語でいう「灯台」です。

つまり、「灯台」という単語。これは、たしかに見た目のカタチは、現代語も古語も同じになっている。でも、そのことばによって、あらわそうとしている内容は、ぜんぜん違う。そういうことになるわけです。

そのため。もしも、「灯台」ということばを、室内の照明器具の意味で使ったばあい。いいかえれば、上の表のうちで「右」側の画像があらわしているものの内容を表現するために用いたばあい。それは、現代語からは、離れた使いかたということになります。

そして。そのため、そのときの「灯台」ということばの使いかたは、「古語法」だとされるわけです。

現代とは「ことばのカタチ」が違うタイプ
つぎに。

現代語 古語
あらわしたいと
考えている対象
それを
あらわすために
使っていたことば
ごはん 固粥

現代とは、同じことを表現するのに「ことばのカタチ」がちがうタイプ。これについて、見ていくことにします。

右の表にある、イラスト。これを(現代語で)なんと呼ぶのかは、だれでもわかります。「ごはん」といいます。念のため書いておくと、今回ここで問題とするのは、「蒸した米粒」についての呼びかたです。「食事」という意味で、ときどき使う「ごはん」ということは、考えに入れないでください。

で、その現代語で「ごはん」と呼ばれているモノ。これが、「古語」では何という名前をもっていたのかというと、それは「固粥(かたがゆ)」というものです。

つまり、右のイラストのモノは、現代語と古語とで呼びかたが違っています。

そのため。もしも、イラストのモノを呼ぶときに「固粥(かたがゆ)」ということばを使ったばあい。それは、現代語からは、離れた使いかたということになります。

そして。そのときの「固粥(かたがゆ)」ということばは、「古語」だとされるわけです。

「現代語」としては、使われることがなくなっているもの
3番目として。「廃語」とか「死語」とか呼ばれるもの。これらについても「古語」と呼ばれることがあります。

「廃語」「死語」というのと、「古語」とでニュアンスに違いがあるとするなら。「廃語」「死語」ということばのほうが、「使われなくなって、それほど時代が経っていない」ということがいえます。

たとえば、「あたり前田のクラッカー!」なることば。これは、たしかに「死語」です。けれども「古語」といういうのとは、ちょっとイメージが離れています。それがつまり、「死語」と「古語」とのあいだにある、「差」だということになります。
なお。「廃語」や「死語」といった用語には、上のについても含めることもあります。つまり、ほかの単語が使われるようになったことで、使命を終えてなくなってしまったことば。これについても「廃語」とか「死語」と呼ばれることもあります。

それと。
完全に「現代では使われなくなったことば」というのを、考えたばあい。それは、「枕詞」「序詞」のようなものに限られてきます。
:廃語、死語、掛詞(懸詞)、縁語、枕詞、序詞 (⇒くわしくは「死語・廃語」「掛詞」「枕詞」「序詞」も、あわせて参照してください)

「現代語」として、いまでも使われているもの
さいごに。

現代語 古語
あらわしたいと
考えている対象
それを
あらわすために
使っていたことば
もも(桃)

現代の世のなかでも、むかしとほとんど同じ意味で使われていることば。これも、ばあいによっては「古語」に含めることがあります。

右の例を見てみると。右のイラストは、もちろん現代語では「もも(桃)」と呼びます。

では、むかしは何という名前だったかというと。やっぱり、いつの時代でも日本では「もも(桃)」というものでした。『古事記』にも「もも」が出てくるので、「もも」は大昔から「もも」ということばで呼びあらわされていたはずです。この「もも」は、イザナギさんが魔除け(?)の武器として、3つほど投げつけたりしています。

これは。
とくべつ「古語」であると、意識することがないのがほとんどです。ですが、広い意味では「古語」というカテゴリに入ることになります。

昔のヒトも使っていた。いいかえれば、古い時代「でも」使われていた。そのような理由から、広い意味では「古語」の一員に加えることがあります。

深く知る2「古語法」は、「単語の違い」だけではない

古典の文法とかいったものを利用した「古語法」
「古語法」というレトリック。この「古語法」は、おおくのばあい「古語」を使うという方法がとられます。つまり、モノを指ししめすために、むかし使われていた単語を使う。これが、いちばんスタンダードな「古語法」を用いるための方法です。

ですが。
応用編として、「古い文法を使う」といったこと。それが、すべて「古語法」に含まれることになります。

古典の勉強をはじめるわけではありません。ですので、長くならない程度にまとめてみます。
●動詞とか形容詞の活用の違い
むかしと今とでは、動詞や形容詞の活用のしかたが違います。たとえば江戸時代の中ごろまでの動詞。一部の例外をのぞくと、上段活用・下段活用でした。現在では、上段活用・下段活用に移っています。
●助詞や助動詞の違い
助詞や助動詞も、いまとは別の単語が使われていました。「むず」とか「ごとし」とか、まあ、いろいろ違います。
●仮名づかいの違い・書きあらわし方の違い
「旧仮名づかい」というものがあります。「ゐ」とか「ゑ」なんかが出てきたり。「あわれ」のことを「あはれ」と書いたり。これまた、多くのところが異なります。
●そのた
ほかにも。たとえば「係り結び」があったりとか、いろんな違いがあります。コミックで見つけることができるかは分かりませんが、発音の違いについても「古語法」に含めることができます。
おおざっぱに言って、こんなふうになります。

ちょっと例を見てみる
いちおう。例をあげて、確認をしてみます。

——『幻燈倶楽部』1巻46〜47ページ(黒輪ビビコ/集英社 ジャンプ・コミックス
器人 萬ノ夜ヲ経テ
器物ハ器人ヘト
転ズル——…

……と言いましてね」
ハレノたち ひっ」
器人たち 我々は器人
人間に打ち捨てられし
人間への恨みにより
変じた
器物の化身…!!」
——『幻燈倶楽部』1巻46〜47ページ
(黒輪ビビコ/集英社 ジャンプ・コミックス)
右の引用は、『幻燈倶楽部』1巻から。

時代は、大照(たいしょう)二十八年。場所は、帝都・東京。

文明開化の時代。それは同時に、どんどんと古いモノが捨てられていった時代だった。

そんな中で。メンドウなので、いきさつは省略して。その捨てられていったモノたちが、すがたを変えてあらわれる。

打ち捨てられていったモノ=「器物」。これが、人間のように化けものになる。彼らは、みずからを「器人(きじん)」と呼ぶ。

そういったわけで。この「器人」っていうのは、いってみれば「古いモノ」の「怨念」みたいなヤツラ。なので、言いまわしが、ちと古い。つまり、「古語法」にあたる。

たとえば。
萬ノ夜」(よろずのよ)
という単語。これは、ほとんど現代では話しことばとして使われることはない。
それはつまり、深く知る1であげたような、「古語」を利用しているということ。だから、典型的な「古語法」にあたる。

また。深く知る2●であげた「助動詞の違い」として、
打ち捨てられし」の「
があげられます。

さらに。深く知る2●に書いた「書きあらわし方の違い」として、
萬ノ夜ヲ経テ 器物ハ器人ヘト 転ズル——…
というように、カタカナを使うことで古さを出しているというところがあげられます。

なお。
たとえば「恨み」という単語は、ここでは現代語と同じ意味で使われています。なので細かいことをいえば、深く知る1に補足しておいた「現代語と、ほとんど意味の変わらない古語」を使った「古語法」ともいえます。

個人的に難しいのは、「器物(きぶつ)」かな。
むかしは「器物」と書いて、「きもつ」と読むことが多かったらしい〔日葡辞書:Qumot うつはもの〕。そして書きことばでは、今よりも使われていたようす。『角川古語大辞典』(中村幸彦・岡見正雄・阪倉篤義[共編]/角川書店)には、そんな感じに書いてあった。

現代では、「器物」なんていうのは法律の世界でしかお目にかからない。そして、私(サイト作成者)が法学部の出身であるがゆえに、ふつうのヒトよりも見かけることが多い。なにせ「器物損壊」と耳にすると、「養魚池の鯉を、水門の外に逃がしてしまった」シーンが思い浮かぶ。その鯉がアタマのなかを泳ぎまわってしまって、軽いパニックになる(大判明44・2・27)。

「器物」は、ふだん使われる「現代語」じゃないのかな。もしも「そんなことば、口にしたこともない」というヒトが、大多数なのならば。これも「古語」にあたる。

まあ。どれが「古語」なのかを区別したり、線引きをしたりすることには意味がない。いたるところに、むかしの文法や古い言いまわしが、ちりばめられていること。そして全体として、「古めかしい」「時代をさかのぼった」感じを受けるということ。それが、「古語法」と使うときには大事になってきます。

まあ「古語」を使うのが、「古語法」の王道だけれど
もっとも。
「古語法」を使ううえで、効果を得ることがカンタンに出来る方法。それは「古語」という単語を使う方法です。また、「古語」という単語を用いるのが、「古語法」を作ろうとしたときに、いちばん手軽だと思います。

たとえば。
「動詞や形容詞の活用」を変えてみるとか、係り結びをつくるとか。そのときには、あるハードルが考えられるのです。それは、失敗したウソの「古語法」を捏造しかねないということです。

でも、「古語」という単語レベルにおさえて使っておけば。
まちがった「古語法」をつくったりする心配も、少ない。そして「古語法」を使うことによって得ることのできる効果が、減るわけでもない。

そういったわけで。
やっぱり、ある特定のモノゴトを表現するために使う「古語」。この「古語」を利用するというのが、まず安全です。

深く知る3「古語」が使われる場面
「ことわざ」、「箴言」などのなかで
「ことわざ」とか「成句」といった、言いまわしの決まったものは。おおくのばあい、むかしから使われています。そのため、古い時代のことばが残っていることがあります。そういえば、「灯台、もと暗し」という諺がありますが。じつは、ここでいう「灯台」というのは「部屋で使う照明器具」のことを指しています。
: (⇒くわしくは「ことわざ」、「箴言」、「慣用句」、「イディオム・成句」ページも、あわせて参照してください)

「地域方言」のなかで——方言周圏論
ふつうに「方言」といったばあい、その土地ごとの「訛り」なんかのことをいいます。学問としてはこれを「地域方言」と、呼んでいます。

で。
この「地域方言」のなかには。古い時代に使われていたことばが、残っていたりすることがよくある。つまり「古語」といわれるものが、中央から離れた土地の「方言」として使われていたりする。そういったことが、(それが理論といえるほどに)多い。この現象のことを、「方言周圏論」といいます。

「方言周圏論(方言周圏説)」について、くわしいことは。「地域方言」のページのほうで、書く予定にしています。ですがまだ、このサイトには「地域方言」のページがありません。ですので申しわけありませんが、もうしばらくお待ち下さい。
:地域方言、方言、訛り、俚言 (⇒くわしくは「地域方言」、「方言」、「訛り」のページも、あわせて参照してください)

「社会方言」のなかで
学問の上としては、「方言」という用語には。「地域方言」のほかに、もう1つ違ったカタチものが含まれます。これを「社会方言」と呼んでいます。

「社会方言」というのは、社会のグループごとに違った言葉づかいをしていることをいいます。

たとえば「上流階級」が使っていることばと、「労働者階級」が話していることば。この2つには、違いがあります。また、「お役所ことば」とか「若者ことば」といったもの。たしかに「お役所」や「若者」のなかでは、ほかの人たちとは少し(かなり?)違った、会話のやりとりをします。こういったものを、「社会方言」といいます。

とくに、「古語」が残っていやすいところ。つまり、「社会方言」のなかに「古語」が、消えずにとどまっていることが多いグループ。

1つは、「卑語」と呼ばれることばのグループ。つまり、相手をオドしたりする汚らしいことばを使うのを得意とした集まり。このなかには、わりと「古語」が残っています。

そしてもう1つは、かなりの上流社会の人たちのグループ。とくに、皇居に住んでいる方々に親しいメンバーたち。こちらにもまた、いろいろな「古語」が見受けられたりします。
:社会方言、卑語  (⇒くわしくは「社会方言」のページも、あわせて参照してください)




レトリックの呼び方

呼び方5 古語法
使い方2 古語・古典語・古文体・古風体・擬古体




せまい意味で、「古語」ということばが使われるとき

ふつうに「古語」というと、「むかしの人が使っていた、古いことば」という意味です。ですが、国語学の学問上では、この「古語」という用語。これが、もうちょっと厳密なことをあらわすのに使われます。

なにかというと。

「古事記」だとか「万葉集」だとか。そういった、日本の奈良時代(つまり上代)に使われたことば。ようするに、「記紀」「万葉集」を読解するのに知識として必要となってくるような、とくべつなことば。

こういったものを、せまい意味で「古語」といいます。このあたりについては、『国語学大辞典』(国語学会[編]/東京堂出版)に、すこし多めの説明が書いてあります。



関連レトリック

音数律枕詞序詞掛詞、縁語、見立て女房詞

参考資料

●『日本語解釈活用事典』(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助[共編著]/ぎょうせい)

「事典」としては、かなりの量を使って説明をしている本です。国語学のほうで解説してある本としては、まずまず平均的で、無難なものだと思います。
●『(研究社)新英語学辞典』(大塚高信・中島文雄[監修]/研究社)
上にあげた本だけだと、国語学にばかり偏ってしまうので。英語学のほうからの意見を聴く本として、あげておきます。
●『文章読本 改版 (中公文庫 ま17−9)』(丸谷才一/中央公論社)
著者の丸谷才一がいう「古語」というのは、せまい意味での「古語」です。いいかえると、「古事記」や「万葉集」を読むのに必要となることば、それが丸谷才一がアタマに置いている「古語」です。

それにたいして、引きあいに出されている谷崎潤一郎。「古語」ということばを谷崎潤一郎が書いたとき、その考えの中心にあるもの。それは、広い意味での「古語」です。つまり、明治時代よりも前のことば。それが、谷崎潤一郎が「古語」ということばを使ったときに、前提としているものです。

もちろん。どちらが正しいとかいうことは、けっしてありません。



余談

余談1かつて、この世に「ラブレターを矢文」で送ることがあったのか?

これは『School Rumble』にたいしての、ツッコミ。

現在はもちろんのことだけれども。
昔でも「ラブレターを矢文で届ける」ということはしていなかったと思う。

たとえば、『なんて素敵にジャパネスク』(山内直美・氷室冴子/白泉社 花とゆめCOMICS)という作品があります。で、この『なんて素敵にジャパネスク』に登場する貴族たちは、下女に恋文の和歌をたくしている。で、その下女に届けてもらっているのです。

やっぱり、ラブレターに矢文を使うのは、今も昔もないことだと思う。まあ、そこで笑いを取ろうとしているのだけれども。

余談2「朝餉」について、語る。
これは、『School Rumble』に出てきた「朝餉」という単語。これについて、オマケとして下に3つほど。

 ☆「朝餉」についての「オマケ」その1。

この言葉の意味は、ほとんどの人には説明はいらないと思う。けれども念のための書いておくと、「朝食」という意味です。「あさげ」と読みます。

 ☆「朝餉」についての「オマケ」その2。


古語辞典によると、「朝餉」は「あさけ」と濁音のつかない清音で使われていたとのことです(江戸時代あたりまで)。

 ☆「朝餉」についての「オマケ」その3。

googleでの検索結果では、
  • 「朝餉」→約4900件
  • 「夕餉」→約17000件
に対して、
  • 「昼餉」→約700件
となっています。この結果を見る限りでは、「昼餉」という言葉は、あまり多く使われてはいないと言えそうです。その理由としては、江戸時代ころまでは一日二食、つまり、朝と夕の2回の食事だったからだと思われます。

気になったので、古語辞典を調べてみると、こんなふうになりました。

朝餉 昼餉
『新明解古語辞典』(三省堂) ○あり ×なし
『旺文社古語辞典』(旺文社) ○あり ○あり
『全訳古語例解辞典』(小学館) ○あり ×なし
『角川新版古語辞典』(角川書店) ○あり
『古語林』(大修館書店) ○あり ○あり
『岩波古語辞典・補訂版』(岩波書店) ○あり ×なし
『完訳用例古語辞典』(学研) ○あり ○あり
※=「ひるげ」ではなく「ひるがれひ」で掲載がある
順不同です。というか、調べた辞書の順番に書いただけです。

で調べた結果、「昼餉」は微妙です。「○あり」が3つ、「×なし」も3つ。「そのた」が1つ。
全ての辞書に掲載されている「朝餉」と比べると、「昼餉」の掲載されているものは少ない。やっぱり、「昼餉」はあまり食べないものみたいです。

余談3じつは、「古語」をキッチリ分類できるわけではない
はじめのほう。「深く知る1古語法の作りかた」のところで、からまで、あげてみました。

けれどもじつは、こんなにキッチリとわけられるものではありません。そこには実は、たんに「オモテ」と「ウラ」という関係がある。ただ、それだけにすぎません。
現代語 古語
あらわしたいと
考えている対象
それを
あらわすために
使っていたことば

たとえば、「花」と「サクラ」の関係。

まず、を見ていただくと。
学校の古典の授業で、習ったかもしれません。「古語」では「花」というは、おおくのばあい「サクラ」という特定のものをさしています。

「花」というの単語が、「現代語」とちがったモノゴトをあらわしている。なので。この「花」という語は、上に書いたの理論でいうところの「古語」です。
現代語 古語
あらわしたいと
考えている対象
それを
あらわすために
使っていたことば
サクラ

つぎに、に移ると。

現代のことばで「サクラ」と呼んでいる、右のイラストのモノ。これを、むかしのヒトが呼ぶときには、たいてい「花」という単語を使いました。

しかしながら、現代。いまの時代に、右のイラストのモノに限って呼びたいときには。これを、「サクラ」と言わなくてはなりません。

そういった意味では。この「花」なる単語は、先ほどあげたの理論でいうところの「古語」です。
現代語 古語
あらわしたいと
考えている対象
それを
あらわすために
使っていたことば

さいごに、の図を見てみると。

結局、「花」という単語。これでもって、むかしでも「花」一般をあらわすことができました。そしてもちろん、いま現在でも「花」という咲いたり散ったりする植物を、指ししめします。

以上をまとめると。
「花」という単語が、「古語」であるという理屈。これはの理論からでも、の考えかたでも説明がつく。そしてだといっても、かまわないというわけです。

では、なぜ。このような、奇妙なことになってしまうのか。その理由は、の理論との理論とが、たんに「オモテ」と「ウラ」という関係がある。ただ、それだけにすぎないからです。

つまり。
の理論は、「花」という「文字(単語・ことば)」の側からみている。「花」といったばあいに、それがなにをあらわしているか。そのような視点に立っている。

それにたいして、の理論は。という「あらわしたいと考えている内容」のサイドから出発している。をあらわしたいときに、どんな「文字(単語・ことば)」を使ったらよいのか。そういった基準に、よっている。

なので。の理論、の理論という2つは、ある1つの考えを「オモテ側」と「ウラ側」とで言いかえたにすぎないのです。

そして。の理論との理論とが、時代とともに移り変わっていくものだということ。言いかえれば、どんな「文字(単語・ことば)」が、どのような「あらわしたいと考えている内容」をもっているか。それは、けっして突然変異のように起こるのではない。あくまで、時代の流れを受けて少しずつ「ズレて」いく。

そのため、どんな「文字(単語・ことば)」が、どのような「あらわしたいと考えている内容」をもっているか。それは、たしかに時代によって揺らぎはあるけれども、むかしのことばを受け継いできている。それを確認したのが、の理論。

だから。「古語」のパターンが4つある、というのはあまり正確な書きかたではない。なぜならそれは、あくまでモノゴトの見かた・視点の立ちかたによって別のモノにみえるだけなのだから。

余談4「シーニュ」とか書いたら、ダメなのかなあ
すぐ上に書いてたことの、つづき。
「シニフィアンとシニフィエの関係は恣意的である」。つまり、「シーニュの関係」にある。
そして、「シニフィエとシニフィアンとのあいだには、差延が生じる」。
とか書いたら。言語学を知っているヒトは、「眉をひそめる」か「腹を抱えて笑う」かは知らないけれど。ちょっと、ちがうんだろうなあ。

でも。上のほうでとかとか書いて、区別してみたときに。私(サイト作成者)が、アタマにおいていた「着眼点」というのは、そういったところにあります。

余談5このページにある[マーク]について
このページには、[マーク]がたくさんあります。これは、あまり気にしないで下さい。

マーク]は、
「リンク先に書いてあるレトリック用語」のページと
書いている内容が合っているかどうか、まだ突きあわせて確認していないよ
という意味でついています。

私(サイト作成者)が、まだ「書いている内容を突きあわせて『確認』する」という手続きをしていないよ、という意味の記号です。あくまで「リンクした先と、内容に食い違いがないか『確認』をしていない」というものです。

たんに『確認』をしていない、ということにすぎません。けっして、「食い違いがある」ことをあらわすものではありません。

なので[マーク]は。このページを読んでいらっしゃる方々には、ほとんど関係がありません。


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