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対照法・対句 たいしょうほう・ついく antithesis
——『砂の神 空の人』表紙(唯登詩樹/集英社 ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ) 『砂の神 空の人』

唯登詩樹
——『砂の神 空の人』表紙
(唯登詩樹
/集英社 ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)


定義重要度

対照法・対句は、対立した表現を使ってコントラストをつくるレトリックです。つまり、文のカタチやことばが対照となるような関係におくものです。


効果

効果1お互いに際だたせ、印象を深める

「対照法」は、ことばをお互いを際だたせ、引き立てることができます。またそれぞれの特徴を際ただせ、印象を深めるものものとなります。
:際だたせる、目立つ、引き立つ、引き立てる、水際立つ、映える、光る、輝く、印象を深める、印象深い、焼き付ける、感銘を深める、胸を打つ、胸に響く、鮮明、はっきり、くっきり、際やか、ありあり、鮮やか、明らか、明白、明瞭、見るからに、深まり、躍動感、躍る、引き立つ、引き立てあう
効果2対比されることによって、鮮やかな表現になる

同じ形の文が、並べられることになります。ですので、そのコントラストを強調する効果があります。いいかえれば、ふたつの意味が対になっていることによって互いに対比されるため、対義語のもっている「対義」の部分が、鮮やかなものとなります。
:コントラスト、対、対する、相対する、相照らす、対比、対照、対置、バランス、均衡、釣りあう、釣りあい、形式美、相乗、浮きあがらせる、浮かぶ、浮かばせる、浮かべる、浮上
効果3リズムにのることで、記憶するのに役立つ

リズミカルなので、頭から導きやすい。そのため、記憶をするのに役立ちます。
:リズム、律動、リズミカル、律動的、音楽、旋律、音調、音律、メロディー、記憶、覚える、そらんじる、暗記、調子、調和、口調、歯切れ、語調、語勢、音調、反復、くり返し、重なる、重ねる、たび重なる、重複

使い方
使い方1となりあう文の長さが、等しい

第1条件として、となりあっている文の長さが等しいことがあげられます。
:長さが等しい
使い方2対比されることばに、関連がある

第2条件として、そこで向かい合って使われているそれぞれのことばに、関連がある
:対比
使い方3意味がおたがいに対になっているもの

第3条件として、意味が対になっていることがあげられます。これは「対照法・対句」をつくるときに必要とまでは言えません。ですが、こんにち日本語で「対句っぽいもの」をあげるとしたら、この第3条件が必要となります(漢詩を創るとか言うばあいには、必要とまではいえません)。
:対

注意

注意1語の運びのジャマをする

語の運びのジャマをする
:語の運びのジャマをする、妨害、邪魔立て、妨げる、妨げ、阻む、阻害、文脈、コンテキスト
注意2装飾だけに執着してしまう

はなやかな装飾だけをするので、理屈が通らない、無理、不自然
:装飾、飾る、飾りつける、飾りつけ、彩る、彩り、無理、難しい、不自然、ヘン、奇妙、妙、珍奇、奇抜、奇矯、特異、おかしい



例文を見るその1例文を見る(末尾)

引用は、『砂の神 空の人』の表紙から。

この本のタイトルである
 砂の神 空の人
という部分が、「対照法・対句」にあたります。

確認してみましょう。

まず、「砂の神」と「空の人」は、文章の形式が対比=対称になっています。
さらに、「砂」と「空」は対立関係にあります。なぜなら、ここでいう「砂」は、舞台である「砂漠」を意味するため、「地面」と「空」という対照的な語句にあたります。また、「神」と「人」とは、完全な対義語とはいえませんが、対照的な語句といっていいでしょう。

したがって、これは「対照法・対句」にあたります。

もっときれいな「対照法・対句」の例をあげれば、『封神演技』(藤崎竜/ジャンプコミックス)1巻の冒頭(9ページ)にある、
仙人は天空に住まい
人間は地上に住まう
というのが、より典型的な「対照法・対句」といえます。

この『封神演技』から引用して、「対照法・対句」の例文として画像にしなかったワケは、この言葉で使われている文字の大きさが小さすぎためです。上で引用した『封神演技』の「対照法・対句」が書かれている文字の大きさは、「10級」=「2.5ミリ」にも満たない大きさです。これはキャプションなどに使う文字の大きさです。本文で使っている文字ならば、少なくとも「12級」=「3ミリ」くらいで書いて欲しいです。「10級」くらいの大きさなので、これを画像にしたときに、文字が読みとれなくなると判断しました。そのため、画像として引用はしませんでした。



例文を見るその2例文を見る(末尾)

——『GUNSLINGER GIRL』1巻表紙(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)
少女に与えられたのは、
大きな銃と小さな幸せ。
——『GUNSLINGER GIRL』1巻表紙
(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)
『GUNSLINGER GIRL』(相田裕/メディアワークス 電撃コミックス)のキャッチコピーとして、
少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ。
というフレーズがあります。右の画像を見てもらえば分かることですが、1巻のオビに書いてあったフレーズです。
(右の画像は、某所からのコッソリ盗んできたものです。というのは残念なことに、私(サイト作成者)が持っている『GUNSLINGER GIRL』の本は「中古本」なので、オビがついていないかったからです。)

で、ここでは。
このフレーズの中にある「大きな銃」と「小さな幸せ」というところ。そこに、注目してみたいと思います。

とりあえず。
「大きな銃と小さな幸せ」ということば。これは、「対照法・対句」と考えてよいと思います。

ですが、よく見ると不思議なところがあるのです。たしか「対照法・対句」には第3番目の条件として、「意味が対になっているもの」というのがあったはずです。ですが、ほんとうに「意味が対になっているもの」なのか疑問があるのです。

ようするに、なにを言いたいのかというと。

上で書いた「大きな銃と小さな幸せ」のうちで。「大きい」と「小さい」とが、対義語であることは分かります。ですがしかし、「」と「幸せ」とが対義語だとは、ふつう思わない。なので、全体としては「意味が対になっているもの」と考えてはいけないのではないかと思えます。

なのにもかかわらず、「大きな銃と小さな幸せ」というものは「対照法・対句」に見えるのです。「」と「幸せ」とが対義語ではないはずのに、「対照法・対句」と思われるのです。

そのように、「対照法・対句」だと感じられる理由。それは、「それぞれの単語が、交差的におかれている」という形式に原因があります。
「対句」では、まるでシンメトリックな関係にありそうな位置に、ことばがならべられています。そのため「」と「幸せ」とが、対義語の関係にあるようなイメージが与えられるのです。

そして。もう少し考えをすすめると。
ふつうならば対義語ではないはずの「」と「幸せ」という単語を、鏡のように対称的に配置することで。
」ということばの持っていることばのニュアンスのうちで、
幸せ」ということばと反対の意味を読みとることのできる部分に注目してほしい
というメッセージを、受けとることができるのです。

そのことは、逆に。
幸せ」ということばの持っていることばのニュアンスのうちで、
」ということばと反対の意味を読みとることのできる部分に注目してほしい
ということでもあります。

このように、「対句」には。
ふだんならば対義語に見えないはずの、2つの語句。その2つの語句のうちで、対称的に感じることのできる部分を強調して示すことができるといえます。

そしてそれは。
「あたかも対義語であるかのように、錯覚させる」という効果だということもできます。



レトリックを深く知る

深く知る1「対照法・対句」のくわしい定義
「対照法・対句」は、「文の形式」と「使われる言葉」を、ともに対比の関係にするレトリックです。つまり、
  1. 文の長さが等しい

  2. しかも、そこで向かい合って使われているそれぞれのことばに、関連がある
というものが、「対照法・対句」となります。

ですが、『広辞苑』(岩波書店)が書いているように。多くの場合には3つ目の条件として、
  1. 意味が対になっているもの
を加えます。この「1.」から「3.」までが全部そろっているものを「対照法・対句」としています。

ですのでこのページでも、上に書いた「1.」から「3.」までを満たしているものを「対照法・対句」と呼んでいくことにします。

深く知る2「対照法」に近いレトリック用語
「対照法・対句」に近いレトリック用語をならべてみると、次のようになります。
  • 倒置反復法:語順が「AB−BA」となっているもの。完全に語順が入れかわっている。
  • 交差配語法:語順が「AB−B’A’」となっているもの。不完全だけれども語順が入れかわっている。
  • 同形節反復:同じ長さの文がくり返されるレトリック(「平行法」に近い)
  • 平行法:同じパターンの文がくり返されるレトリック(「同形節反復」に近い)
  • 対偶法・対置法:
  • 逆対句:「倒置反復法」と「対句」を組み合わせたようなレトリック
  • 方便法:ある言葉が「きれい」であることを際立たせるため、近くに「きたない」言葉を用いるレトリック
  • 抑揚法:
くわしくは、それぞれのページをご参照下さい。

深く知る3広い意味での「対照法」と狭い意味の「対照法」との関係

この「対照法」には、「広い意味での対照法」と「狭い意味での対照法」という、2つの種類があります。

広い意味での「対照法」は、ことばの長さについて考えます。つまり、言葉の長さが対称であることに注目するのが、広い意味での「対照法」です。
このレトリックには、「同形節反復」や「平行法」などが当てはまります。

これにたいして、狭い意味での「対照法」という用語は、言葉の内容が対称になっていることをいいます。狭い意味での「対照法」は、ことばの意味が対称であることに着目してものとなります。

深く知る4「対照法・対句」の説得力
「対句」は、漢詩から取り入れられたレトリックです。ですが、こんにち日本で読み書きするときには、たぶん漢文を使う人もいない。韻文を使う人もいない。…漢詩をつくろうとしているのでなければ。

といったわけで。
現代の日本で、この「対句」が完全なカタチであらわれることは、ほとんどありません。

ただし例外として。つぎのようなばあいには、よく使われることがあります。


深く知るa「ことわざ」などで使われる「対照法・対句」の例
この「対照法・対句」は表現が印象的で、説得力をもつものになります。そのため、「成句」や「警句」や「ことわざ」などにも多く使われます。たとえば、
  • 「聞いて極楽、見て地獄」
  • 「帯に短し、たすきに長し」
  • 「遠くの親戚より、近くの他人」
みたいに、いろいろあります。

なぜ。このような「慣用句」としてフレーズが決まっているモノであれば、逆に多くのものがあるのか。
それは、
  1. 「ゴロがいい」ので使いやすい

  2. 「ことばの意味やカタチが並行している」ので、感覚的に受け入れやすい
といった理由があるからだと思われます。

深く知るb「お役所のスローガン」のようなもの
もう1つの例として。「お役所のスローガン」とか「標語」といったものには、この「対句」が登場します。
  • 注意一秒、ケガ一生 (交通安全の標語)

  • 一枚の偽札、一生の重罪。 (日本銀行の広告)
といったかんじのものが、いろいろと作られています。

なぜ、「お役所」がスローガンを作ると「対照法・対句」が多いのか。それは、ちょっと分かりません。

でも。どうしたことか、「対照法・対句」を使っているくせに「パンチの弱い」スローガンを発表するのは、「お役所」なのです。




レトリックの呼び方

呼び方 対照法・対句・対句法
呼び方 対偶法・並行体・並列体
呼び方 対照・対置法・対置
呼び方 対立・対立法・アンティセシス・アンチーシス・並列法



別の意味で使われるとき

「対照法」と哲学用語

英訳として書いてある「antithesis」という英語は、あくまでも「レトリック用語」の「アンチテーゼ」です。弁証法とかにでてくる、哲学用語としての「アンチテーゼ」とは、関係ありません。



関連レトリック

倒置反復法交差配語法同形節反復平行法、対偶法・対置法、逆対句方便法、抑揚法、古語法

参考資料

●『文章読本 改版 (中公文庫 ま17−9)』(丸谷才一/中央公論社)

「対句」について、手厚い解説がしてある本。説明している小説家なので、「レトリックを使ったばあいの効果」にも、かなりの分析がしてあります。
●『レトリックと文体—東西の修辞法をたずねて—』(古田敬一[編]/丸善)

古田敬一氏の執筆した部分で、「対句」への解説がされています。かなり長いです。そして、やや難しめです。
●『日本のレトリック—演技する言葉—(ちくまライブラリー8)』(尼ヶ崎彬/筑摩書房)

「対句」が、日本の文学史でどのような役割を果たしたか。そのあたりを中心に、解説がされています。
●『レトリックのすすめ』(野内良三/大修館書店)

「対照法」について書かれています。日本語の文が例に上がっているので、分かりやすいと思います。『レトリック辞典』(野内良三/国書刊行会)なども参考になります。


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