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敷衍 ふえん amplification
——『東京ミュウミュウ』2巻50ページ(征海未亜・吉田玲子/講談社 コミックスなかよし)
みんと ごらんあそばせ!
この つややかに毛先まで
キューティクルの
ゆきとどいた まるで
ブラックオパールの
ように光輝く黒髪!

神秘的かつ知的な
しずけさをたたえながら
その奥に
秘めた情熱をもつ
ブルーサファイアの
ような瞳!

さらに!細く長く あくまでも
スラリとのび しかし
一目見て日ごろの
エクササイズの
たまものとわかる
ホワイトプラチナの
ごときおみ足!
このお方こそ!!
まちがいなく わたしたちが
さがしもとめた
最高の仲間!
地球を救う真の戦士ですわっ」
——『東京ミュウミュウ』2巻50ページ
(征海未亜・吉田玲子/講談社 コミックスなかよし)


定義重要度

敷衍は、1つの話題についてカタチを変えながらくり返す、というレトリックです。


効果

効果1聞き手や読み手に、強く印象づけることで注意をひく

「敷衍」では、伝えたい対象のことをくわしく述べることになります。この「くわしく述べる」ということによって、伝えたいその対象を強調する効果がえられます。たしかにレトリックを使えば、たいてい強調という効果をえることができます。ですが、「敷衍」ばあいでの「強調」という効果には、他とは違うポイントが1つあります。それは、「話し手(書き手)は、このことを強調したいんだ」というメッセージを伴って、伝わりやすいということです。
:強調、力説、言い立てる、印象づける、焼き付ける、注意をひく、念を入れる
効果2聞き手や読み手の理解を助けることで、より分かりやすくなる

「敷衍」では同じ題材とか似た題材が、くり返し続けて話題に出ます。このことから、1つのパターンでの伝えかたでは十分には伝わらなかったときにも、何度も似た内容が話に出ることで深く理解することができるようになります。
:理解を助ける、わかりやすい、うなずける、飲みこむ、承知、了知、了解、首肯、合点、得心、納得
効果3聞き手や読み手が、ありありとしたイメージを描くことができる

「敷衍」では、1つのものごとを、より具体的に描きだしていくことになります。このことから聞き手(読み手)は、伝えようとしていることがらを鮮明にイメージすることができるようになります。
:具現、現前、ありありと、くっきり、際やか、あざやか、鮮明、澄明、明らか、はっきり、まざまざ、明白、瞭然、一目瞭然、明白、明々白々、明快、分明、簡明、判然、旗幟鮮明、歴然、歴々、顕然、あらわ、麗々しい、手に取るよう

使い方
使い方1伝えたい内容と結びつきのあることを話すことで、話を広げていく

「敷衍」の使いかたは、大きく2つに分けられます。その1つ目は、伝えたい核となるテーマに近いことがらを、話に組みこむというものです。話の主題とつながりのある、隣りあっているような内容のことを述べていくともいえます。
:拡大、広げる、くり広げる、引きのばす、展開、拡張、詳述、くわしく述べる、増強、強める、進展、発展、長々と、長たらしい、固執、執着、こだわる、とらわれる、えんえんと
使い方2同じテーマにかんすることを、視点を変えながらくり返す

「敷衍」の、もう1つの使いかた。それは、伝えたいテーマを別の言いかたに変えながらくり返すというものです。伝えたいものごとの核となっている部分について、いろいろな観点から迫っていくことで話を広げるというものです。
:くり返す、重なる、重ねる、たび重なる、反復、重複
※使いかたについては、【レトリックを深く知る】のところに細かく書いてあります。ですので、そちらもあわせてご覧ください。



例文を見るその1例文を見る(末尾)

例文は『東京ミュウミュウ』2巻から。

主人公は、「いちご」。

「いちご」たちは、「カフェ〝ミュウミュウ〟」で一緒に働いている。だが、実は「キメラアニマ」という敵をやっつけるという「正義の味方」。そのうち、5人目の仲間ではないかという女の子を、雑誌のモデルに見つける。その時の「みんと」の言葉が引用のシーン。
ごらんあそばせ!
この つややかに毛先まで
キューティクルの
ゆきとどいた まるで
ブラックオパールの
ように光輝く黒髪!

神秘的かつ知的な
しずけさをたたえながら
その奥に秘めた情熱をもつ
ブルーサファイアの
ような瞳!

さらに!細く長く あくまでも
スラリとのび しかし
一目見て日ごろの
エクササイズの
たまものとわかる
ホワイトプラチナの
ごときおみ足!
というふうに、どうみても長い。引用している私(サイト制作者)が、キーボードの叩きすぎで疲れてしまうくらい、とんでもなく長い。このモデルの美しさを、「みんと」はいろいろ挙げています。ですが、その挙げる方法がふつうではありません。必要以上に、余すところ無く述べています。

このように、1つのテーマを伝えるために、くまなく述べていくレトリックが「敷衍」です。



レトリックを深く知る

深く知る1「敷衍」のつくりかたは、4つある
その昔ローマに、クインティリアヌスという修辞学者がいました。古代ギリシア・ローマの修辞学を完成させたと評価されるような、えらい人です。

で、このページで扱っている「敷衍」というレトリック用語。これは、そのクインティリアヌスが発明したものです(amplificatioは、ラテン語で「増幅・拡張」の意味です。)

クインティリアヌスは本の中で、つぎのように述べています。この「敷衍」というレトリックを使うためには、4つの方法がある。「漸層・増大」をするばあい、「比較表現」を使うばあい、「ほのめかす」ばあい、ことばを「積みかさねる」ばあい、の計4つ。

これはたしかに、2000年近く前のローマ人が考え出したリクツです。けれどもこのリクツは、現代の日本人が「敷衍」というレトリックを理解するばあいであっても十分に役立ちます。

ですので、
これより下では、クインティリアヌスがいう「4つの方法」を順に見ていくことにします。

深く知るa伝えたいことがらを、強めながらくり返す——「漸層・増大」(incrementum)
まず、1つめ。これは、話を漸層したり増大したりするというパターンです。

伝えたいテーマにかんすることがらを、だんだんとコトバが強くなるように並べる。段々と盛りあがるように話を進め、話を広げていく。そのことによって、「敷衍」を実現するというものです。

なのでこれは、
漸層法」というレトリックを使うものだ、と言いかえることもできます。
:漸層

深く知るb似たものごとと比較、対照して話を進める——「比較表現」(comparatio)
2つめのこれは、まず似たような関係にあるものごとを出してくる。その上で、それと比べながら話を説きすすめるものです。

話したいテーマと似たような部分を持っている事がらを、用意する。そしてその用意した事がらを、話したいテーマと照らし合わせて比べる。時には、比べることによって2つのあいだの違いを際だたせていく。そういったことでつくられる「敷衍」です。

これについては、「比較法」を用いるものだと言いかえることもできます。
:比較

深く知るbわざと遠まわりをすることで、効果的に伝える——「ほのめかす」(ratiocinatio)
さらに、3つめ。これは、伝えたいテーマに回りくどく言いあらわすというものです。

核心となる点を、正面から衝くということをしない。メッセージの中心から少しはなれた、けれども関わりあいのあることがらを話していく。たしかに直接には関係しないことがらだけれども、それについて長々と語っていく。そのことで、話をふくらませて「敷衍」を仕立て上げるというものです。

ですのでこれは、「迂言法」というレトリックを使うものだと言いかえることもできます。
:周辺、遠まわし

深く知るb似た意味のことばを数多くならべる——「積みかさね」(congeries)
さいごに、4つめ。この方法は、伝えたいことに意味がよく似たことばを並べるというものです。

語りたいものごとを伝える、そのための手段として使われることば。それは、1通りだけではありません。法律の条文でもないかぎり、いろんな言いかたができるはずです。そういった、思い浮かぶ「いろんな言いかた」を、何個も積みかさね並べあげる。それが、このパターンです。

ですので、
さいごのこれは、「列挙法」というレトリックを使うものだと言いかえることもできます。
:ことばを豊かに、累積

深く知る2いくつものレトリックをカバーする「敷衍」

上に書いたように、
「敷衍」というレトリックは、「漸層法」「比較法」「迂言法」「列挙法」といったいくつものレトリックを合わせもったものだといえます(ちなみに、もっと細々と分類した人もいます)。

ですので、この「敷衍」というレトリックは、ことばづかいの細かな部分を考える技術ではありません。もっと、大きな視点をもったものです。考えを伝えるためにたどる、話の進めかたを考えるうえで役に立つものです。




レトリックの呼び方

呼び方 敷衍・敷衍法
呼び方 拡充法
呼び方 増幅法、増強法、増大法、増大誇張、拡張


別の意味で使われるとき

「auxesis」が「敷衍」の意味で使われるばあいと、そうでないばあい

「auxesis」は、このページで扱っている「敷衍」と同じ意味で使われるばあいと、そうでないばあいがあります。2とおりの意味で、使われることがあるのです。
1つは、「敷衍」の意味として。このばあいには、このページで扱っている「敷衍(amplification)」と同じことがらを指すレトリック用語となります。そしてもう1つは、「過大誇張」の意味として。このばあいには、「過大誇張法」のページで説明しているものをあらわしていることになります。
なおこの点については、『レトリック事典』の「3-1-3-1《過大誇張》」にくわしく書かれています。



関連レトリック

列叙法列挙法漸層法(広義の)漸層法(狭義の)類義累積点描法、揃物、多種列挙

参考資料

●『レトリックとテクスト分析——レトリックの視点からのテクスト分析入門』(ハインリヒ F.プレット[著]、永谷益朗[訳]/同学社)

「敷衍」を使うときに利用できそうな技術の、細かい分類が知りたいときには。この本に、くわしく書かれています。



余談

余談1奏のセリフは、638バイトの長さ

奏のセリフは、638バイトでした。
全角文字のばあい2バイトで1文字なので、638÷2=319文字と計算しておきました。

見てのとおり半角数字が混ざっている(そして半角文字は1バイト)なので、実際にはちょっと文字数が増減するかもしれないんだけれど。まあ、だいたいそんなもんということで。


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